若宮綾子展
『居間II』
WAKAMIYA Ayako
若宮綾子展の展示風景です。
各壁面ごとの展示をご覧下さい。
画廊入口から見て、左側の壁面です。
左から、タイトル「答えるより聞く事が多くなっていた1」(スタイロフォーム・トリコット(布))、サイズ40(H)×112(W)×30(D)mm、「ずっとあった筈なのに1」(スタイロフォーム・石粉粘土・油彩)で340×430×60、「ずっとあった筈なのに2」(スタイロフォーム・石粉粘土・油彩)で300×450×60、「ずっとあった筈なのに3」(スタイロフォーム・石粉粘土・油彩)で330×410×60です。
正面の壁面です。
左から、「答えるより聞く事が多くなっていた2」(スタイロフォーム・トリコット(布))で80×140×60、「ずっとあった筈なのに4」(石粉粘土・油彩)で50×1200×100です。
右側の壁面です。
「答えるより聞く事が多くなっていた3」(石粉粘土・油彩)で130×250×60です。
入口横の壁面です。
左から「いつもここに置くのね1」〜「いつもここに置くのね 8」の8点で、サイズはすべて90×40×80、石粉粘土・油彩を使用しています。
床面の台座の作品です。
左奥から右へ「いつからそこにあったのだろう1」で40×90×35、「いつからそこにあったのだろう2」で100×40×70、「いつからそこにあったのだろう3」で50×120×60、「いつからそこにあったのだろう4」で70×40×45、「いつからそこにあったのだろう5」で110×20×20、「いつからそこにあったのだろう6」で40×120×65です。
作品はすべて石粉粘土・油彩を使用しています。
以上の21点が展示室の展示で、その他小展示室に3点、事務所壁面に1点の展示があります。
本展のサブタイトルは『居間II』。
つまり、居間が舞台です。
上は左壁面の「答えるより聞く事が多くなっていた1」です。
いつもの若宮作品のように、スタイロフォームで形を作りトリコットで包んだ、色彩鮮やかな作品です。
タイトルは、子供が大きくなって、母親や父親が教えることよりも訊くことの方が多くなった事態に、ある日気が付いたことを表していると思います。
二つの楕円の塊のバランスが、それをよく表現しています。
左壁面の「ずっとあった筈なのに1」です。
これは居間から見える隣家の屋根だそうです。
いつも見ているはずなのに、その存在の佇まいの美しさに気が付いた瞬間。
この作品に代表されるように、若宮さんの最近の作品では見られない、中間色の微妙な色使いに目が行きます。
正面壁面の「答えるより聞く事が多くなっていた2」です。
子供の成長の早さは、自身の老いを自覚させられますが、そんな時期がこの家の居間にも訪れたのでしょう。
正面壁面の「ずっとあった筈なのに4」です。
これ、何だと思います?
答えは、モップというか帚(ほうき)。
こんな優美なフォルムで佇んでいたんですね。
右壁面の「答えるより聞く事が多くなっていた3」です。
広い右壁面にポツンと置かれた作品。
色と形のバランスが、良いですね。
入口横壁面の「いつもここに置くのね1」シリーズです。
これはお父さんの帽子。
置き場所は決まっていますが、置かれ方が毎日違う。
置かれた帽子には、お父さんのその日の気分、体調が何気なく出ています。
床面に置かれた台座の作品、 「いつからそこにあったのだろう1」〜「いつからそこにあったのだろう6」です。
この台座作品は展示の空間構成の要になっています。
〈作家コメント〉
「居間II」展によせて台所は食事を作る場所。
寝室は寝る為の場所。
部屋にはそれぞれ目的があります。
しかし「居間」という部屋は家の中で唯一目的の定まらない場所です。
不必要な時間や場所から「美しいと思えるもの」は生まれてくるのかもしれません。
居間というのは、家族の交差点です。
個室というものが当たり前になり、茶の間が消えた時、家族が交差するのは居間だけになりました。
確かに、居間というのは多目的でいて、その目的が定まらない場所ですね。
家の、家族の中心であるようでいて、空白の場所です。
そんな居間に注目して、作品化したのが、今回の若宮さんの個展。
まず驚いたのがその油彩の中間色の美しさ。
近年の若宮さんの作品といえば、鮮やかな色彩か、白だけで構成された作品が思い浮かびます
今回は中間色。
微妙にグラデーションになっていて、その変化にも眼を見張ります。
そして多くの作品に用いられた石粉粘土。
石粉粘土は、石を粒の均等な粉状に砕き、接着剤など薬品を混ぜて粘土状にしたものです。
彫刻において、削りすぎても何度でもやり直しが効くため、塑像製作に適しています。
この素材が形作るフォルムと油彩のマッチングが、新たな若宮さんの作品制作に寄与しています。
しかし、穏やかな空間です。
一つ一つの作品もさることながら、わたしはこの穏やかな空間が好きです。
居間に潜んでいた何気ないものや空気や関係を、色と形の宝物に変えてしまう。
優秀な美術家の、仕事ですね。
ご高覧よろしくお願い致します。
2001年藍画廊個展
2002年藍画廊個展
2004年藍画廊個展
2005年藍画廊個展
2006年藍画廊個展
2007年藍画廊個展
2008年藍画廊個展
2010年iGallery DC『DC1』
2010年藍画廊個展
2011年iGallery DC個展
会期
2012年10月1日(月)ー10月6日(土)
11:30amー7:00pm(最終日6:00pm)