藍 画 廊



若宮綾子展
「ただいま」
WAKAMIYA Ayako


若宮綾子展の展示風景です。



壁面ごとの展示をご覧下さい。



画廊入口から見て、左と正面の壁面です。
左から、作品サイズ590((W)×340(W)×140(D)mm、20×30×15(豆粒のような小さな作品)、1720×1500×500、480×260×140です。



正面と右側の壁面です。
事務室入り口の直ぐ左の小さな作品が30×60×25、右側壁面左から、360×420×250、60×1560×60、60×1880×650です。



入口横の壁面です。
270×120×50です。

以上の9点が展示室の展示で、その他小展示室壁面に2点、棚に10点の展示があります。
作品はすべて布・スタイロフォームを使用しています。



左壁面の左端の作品です。
布はスカーフなどで使うシフォンジョーゼットを使用していますが、伸縮性のある素材で、色違いを重ねると、見る角度によって色が異なって見えます。
形はスタイロフォーム(発泡スチロール)で作りますが、この作品のカタチは座骨(骨盤)を表しています。
その為、若宮さんの作品には珍しく、中央に空洞が出来ています。



豆粒のような小さな作品を挟んで、左と正面の壁面に渡る細長い作品です。
人間の身体のようにも、蜘蛛の足のようにも見える、面白いカタチです。
若宮さんに訊くと、具体的なモチーフはないそうです。
画廊全体を白い紙に喩えて、そこにドローイング(線を描く)したような感じで、制作したものです。



正面壁面の作品です。
座骨シリーズの作品ですが、見る角度による色の変化とその質感が、独自の輝きに満ちています。



正面壁面の小さな作品。
左壁面にも豆粒のような作品がありますが、この二つが全体の(インスタレーションの)アクセントのような役割を果たしています。



今度は右壁面の座骨シリーズ。
これも色とカタチの美しさは、前2点と同様です。



右壁面の、対になって立てかけられたような作品。
これもドローイングの発想で作られた作品です。
若宮さんは、耳掻きのようなカタチが持つカーブ、すなわち耳の穴のカーブに興味があって、それがこのようなカタチに影響を与えているそうです。



最後は入口横壁面の作品です。
全体の臍(へそ)のようなポジションを持った作品ですが、造形は制作で余ったスタイロフォームを利用したものです。
この作品も正面から見ると深い緑色をしています。



まずは、作品の持つ変化する色彩と、布の質感に目を奪われます。
そして展示室に自由に置かれた作品のカタチの面白さに、唸ります。
というより、その両者が一体となって、いつまでも見続けていたい誘惑に駆られます。

発光するような布の色彩は、色そのものが独立して表れたような錯覚を覚えさせます。
宙に浮いた、色という現象。
喩えてみればオーロラのような、色の現象です。
その色はかなり鋭い光を放っていますが、なぜか目に優しい色です。
それは色だけの所為ではなく、カタチが影響しているかもしれません。

若宮さんの作品には、一貫して身体性があります。
今回も座骨(骨盤)をモチーフにしたシリーズがあります。
しかし身体性はモチーフだけではありません。
制作方法、インスタレーション全体の印象にも及んでいます。

展示室は、(再び喩えてみれば)ダンスの躍動のようであり、その軌跡にも見えます。
それは若宮さん自身が、そういったパフォーマーであることと関係があります。
意識的に、無意識的に身体のカタチやしなやかな動きが作品に表出しています。
そして、そのカタチや動きには優しさがあります。

その優しさとは何でしょうか。
わたしの個人的な見解ですが、それは弱い者の持つ優しさです。
社会の主流から外れた(外された)者だけが持つ、心の優しさです。
それ故に、その優しさは(逆説的に)強靱になり得ます。
そこから作品の強さが生まれています。

もう一つ。
その優しさは、身体への慈しみ(愛しみ)です。
生まれ、育ち、老化していく身体。
その変化も含んだ、観念ではなく、具体的な身体への慈しみです。

身体で考えて、身体で作品を造る。
それが若宮さんの方法論だと思います。
その結実が、今回のインスタレーションです。

ご高覧よろしくお願い致します。



2001年藍画廊個展
2002年藍画廊個展
2004年藍画廊個展
2005年藍画廊個展
2006年藍画廊個展
2007年藍画廊個展
2008年藍画廊個展
2010年iGallery DC『DC1』

若宮綾子プロフィール




会期

2010年10月4日(月)-10月9日(土)


11:30am-7:00pm(最終日6:00pm)


会場案内