藍 画 廊



若宮綾子展
にくと骨と皮膚と夏休み
WAKAMIYA Ayako


若宮綾子展の展示風景です。



壁面に設置された棚に、四点の作品が展示されています。
作品の表面は、
スカーフなどに使われているシフォンジョーゼットです。
伸縮性のある薄い半透明の布で、色違いを重ねると、不思議な色合いが生まれます。
画廊の白い空間に、色とりどりの布で包まれた作品が、点々と置かれています。

各壁面ごとの展示をご覧いただきます。


画廊入口から見て、正面と右側の壁面です。

左から、作品サイズは55(H)×83(W)×75(D)mm、
45×67×46mm、
67×93×82mm、
49×83×66mm、
85×12×82mmです。
入口横右の壁面です。

左から、54×78×67mm、
53×96×53mmです。
左側の壁面です。

80×140×86mmです。


画廊内の展示は以上の八点で、その他道路側ウィンドウに一点、芳名帳スペースに一点の展示があります。

個々の作品は袋状になっていて、表面は前述したシフォンジョーゼットです。
では、中はどうなっているのでしょうか。
中には、使い込んだ石鹸(自家製)を石膏で型取りしたものが入っています。
そしてその周りには、緩衝材(クッション)として羽毛やビーズ、スチロール等が入れられています。

本展のサブタイトルは「にくと骨と皮膚と夏休み」です。
意味、不明ですね。
種明かしをしましょう。
骨とは石鹸を型取りした石膏で、肉とはクッション、皮膚は表面の布です。
夏休みとは、頭を休暇にして作りたいものを作る、という作家の制作態度です。



展示作品中最も大きな左側壁面の作品です。
重ねたシフォンジョーゼットの不思議な色合いが、良く分かりますね。
前週の塩入さんの布団も美しい色でしたが、今週も優雅で鮮やかな美しい色です。
作品は自由に触れることが出来ます。
手で触れて、その感触を楽しんで下さい。



正面壁面の左端の作品です。
ピンクとブルーが、互いの輝きを相乗させています。
形は不定形で歪(いびつ)ですが、不安定な姿ではありません。
夫々が、自己の場所で静かに佇んでいます。




右壁面の作品です。
渋い色合いの布ですが、とても上品で、シックです。
今回の展示は、若宮さんの色使いの才を再認識させられました。



入口横右壁面のオレンジの作品です。
色もですが、形も良いですね。
そっと触れてみたい、作品です。


若宮さんは美術活動と平行してダンスをなさっているそうです。
ダンスは身体表現(パフォーマンス)です。
ダンスを続けていると、身体とは何かという問題に突き当たります。
今回の制作は、その問題から始まりました。

人の身体は固有で、双子といえども同じ身体ではありません。
身体は、その時代の美意識や老若によって、美醜の判断が為されます。
しかし、そのような既成の概念を取り払って、身体を見たらどうなるでしょうか。

大きく分ければ、にくと骨と皮膚で成り立つ、身体。
若宮さんは、その一つ一つに違う時間と、違う環境と、違う表情を与えてみました。
大きさも全部違います。
神のような仕業ですが、大きく違うのは、理想像や標準がないことです。
それがないことで、逆説的に、どれもが比較できない美しさを持っています。

作家には、その人の表現に適した素材というものがあります。
それを見つけるのも作家の仕事で、作家固有の表現に繋がります。
素材は使われるばかりではなく、作家を触発し、作家の想像力を拡げます。
若宮さんにとって、シフォンジョーゼットや石鹸は、そのような素材ではないでしょうか。

画廊の空間で、美しい重なりの色彩と質感を見せるシフォンジョーゼットの袋。
人の身体も、様々な観念や常識から解き放されたら、その姿はきっと違って見えるでしょう。

ご高覧よろしくお願いいたします。

2001年藍画廊個展
2002年藍画廊個展
2004年藍画廊個展
2005年藍画廊個展


会期

2006年8月7日(月)-12日(土)


11:30am-7:00pm(最終日6:00pm)


会場案内