馬場まり子展
BABA Mariko
馬場まり子展の展示風景です。
各壁面の展示をご覧下さい。
画廊入口から見て、左側の壁面です。
正面の壁面です。
右側の壁面です。
本展は壁面三面を使用したタイトル「街ゆく人々」の展示で、 洋紙(キャンソン・ミ・タント)、 アクリル樹脂絵具を使用しています。
サイズは152×1700cmです。
作品の詳細を左壁面、正面壁面、右壁面の順でご覧下さい。
<作家コメント>
街ゆく人々――宇宙空間の中に消えていく人出てくる人――いつものように絵画の奥行きを少し考えながら人々を私なりにみて楽しく描いてみました。
馬場さんの人を描くシリーズ、新作は絵巻形式です。
画廊入口から時計回りに、左壁面、正面壁眼、右壁面と「街ゆく人」が描かれています。
いつものように市井の老若男女、会社員、職人、生徒などの姿と様相が一人一人丁寧に描き分けられています。
所々に風景や文房具などがインサートされていたり、謎の人物(?)もいて、何回見ても発見のある楽しい絵巻です。
楽しいと言えば、一番楽しかったのは(コメントにある通り)馬場さん自身ではないかと想像します。
楽しみながら多様、多彩な人物像を描いたに違いないからです。人を描く時は、まずは人の観察からスタートです。
その観察眼が奥深く、ユニーク。
風俗を捉えながら、そこに止まらず、豊かな人間性を描写しています。
「街ゆく人々」は歩いている人、立ち止まっている人のポージングの集積ですが、同じ様でいて、すべて異なるポーズになっています。
そして線描、着色も多様で、何れもが個性豊かな人物像です。絵巻は物語や情景を描きますが、そこに時間が含まれることが特色です。
順に見ていくうちに物語が進行し、情景も変化していきます。
「街ゆく人々」には物語も際だった情景の変化もありませんが、そこには独自の時間があります。
「街ゆく人々」の夫々が同じ時間に存在しているかどうかは不明ですが、天候の違いから、時間の幅は多少あるように思えます。
良く見ていくと、此岸に限らず彼岸の人も混じっていて、次元を超えた時間の在り方を感じます。
そういった時間の交錯を可能にしているのは、余白の存在です。背景の白や人物に塗られた白は、無であって、有でもある両義性を持っています。
作家は余白に時間と空間の変換を設え、わたしたちは想像力で余白に異次元の入口を見ます。
また地と図の関係が逆転され(出入りが自由になり)、そこに独自の遠近が生まれ、時間も多層(過去、現在、未来)になります。
二次元であるはずの絵画が三次元にもなり、四次元にもなる。そうして、活写された人々に奥行きが生まれ、「街ゆく人々」の空間はありきたりな日常を超えて拡がります。
ここには西洋的なリアルとは異なる、東洋のリアルを現代に継承した、馬場さんのリアルがあります。
描かれているのは、街を舞台にした人々の人生、つまり死後まで含めた一生の流れに見えます。
楽しい絵巻の中に、『方丈記』の冒頭のような人生の「無常の哲学」を感じます。
絵画の醍醐味とは、このような作品との出会いではないでしょうか。ご高覧よろしくお願い致します。
作品リスト
2011年藍画廊個展
2012年藍画廊個展
2013年藍画廊個展
2014年藍画廊個展
2015年藍画廊個展
2016年藍画廊個展
2017年藍画廊個展
2018年藍画廊個展
2019年藍画廊個展
2021年藍画廊個展
2022年藍画廊個展
2023年3月藍画廊個展
会期
2023年9月4日(月)ー9月16日(土)
9月10日(日)休廊
11:30ー19:00(土曜日、最終日18:00まで)
会場案内