草加登起夫展
KUSAKA Tokio
草加登起夫展の展示風景です。
各壁面の展示をご覧下さい。
画廊入口から見て、左側の壁面です。
左から、作品タイトル「向こう側の表面 IV」—水面の裏側からー 1、「向こう側の表面 IV」—水面の裏側からー 2で、サイズは共に72.7(H)×90.9 (W)cm(F30)です。
正面の壁面です。
「向こう側の表面 IV」—水面の裏側からー 3で72.7×90.9 (F30)です。
右側の壁面です。
左から「向こう側の表面 IV」—水面の裏側からー 4、「向こう側の表面 IV」—水面の裏側からー 5で、サイズは共に72.7×90.9 (F30)です。
入口横の壁面です。
「向こう側の表面 IV」—水面の裏側からー 6で、90.9×116.7 (F50)です。
以上の6点が展示室の展示で、その他小展示室に3点の展示があります。
作品はすべてキャンバスに油彩です。
毎日毎日、猛暑ですね。
しかし藍画廊の中は水で満たされています。
草加登起夫さんの描くプールの絵が、各壁面に展示されているからです。
上は左壁面の「向こう側の表面 IV」—水面の裏側からー 2で、プールを歩いている人を描いています。
なお本展のサブタイトルは『「向こう側の表面IV」 ̶水面の裏側から̶』で、向こう側の表面シリーズの4回目にあたります。
正面壁面の「向こう側の表面 IV」—水面の裏側からー 3です。
この作品もプールを歩いている人を描いています。
右壁面の「向こう側の表面 IV」—水面の裏側からー 4です。
プールの中からの視点ですが、丁度眼の部分で水中と水上が分けられています。
同じく右壁面の「向こう側の表面 IV」—水面の裏側からー 5です。
この作品も水中からの視点ですが、上半身も描かれています。
草加さんに訊ねそびれましたが、水面スレスレの撮影なのか、それとも水中から見える水上なのか、どちらでしょうか。
(草加さんはカメラで撮影してから、それを基に絵を描きます。)
入口横壁面の 「向こう側の表面 IV」—水面の裏側からー 6です。
この作品以外は、モデルに草加さんの家族の方を使って撮影したものを描いています。
基本的にはノーファインダー(ファインダーを覗かないで撮影する)で撮影しています。
この作品は週刊誌に掲載されていた写真を基に描かれています。
両足が膝から下が切断されたショッキングな姿ですが、被写体の方はレバノンの元兵士だそうです。
リハビリとしてプールで泳いでいるのを撮影したものです。
それが草加さんの目に留まって、描かれました。
草加さんの、プールの水中からの視点から描いたシリーズも今回で4回目です。
一貫してこだわっているのは、水面です。
水中から見れば表面、水上から見れば裏面に映る姿を描いて、その不可思議な境を問題にしています。
水面にこだわる以前から、草加さんはモノとモノの境にある膜をテーマにしてきました。
何かと何かを隔てる膜。
普段は何も考えずその存在を認識していますが、改めて考えてみると、不思議な存在です。
例えば、膜を極限まで削っていけば、そこにあるのは何でしょうか。
あるいは、水中と水上を分ける分岐点である面を、確と捉えることはできるのでしょうか。
過日、福岡伸一著『生物と無生物のあいだ』という新書を読みました。
この本のキーワードの一つに「動的平衡系」という言葉があります。
物質が常に秩序を維持するように常に働き、そのモノを形成しているということです。
人間もまったく同じで、人間は流れの中で動的に入れ替わりながら、人間であり続けるらしいのです。
うまく説明できませんが、読後、「万物は流転する」が遺伝子の働きのように思えました。
この本の中に、物質と物質の境の説明があって、それは霧のような粒子として説かれていました。
つまり膜は、膜というモノがあるのではなく、粒子の濃淡のようなもので表されているということです。
この考え方は、草加さんが膜に興味を持っていた当初からの思考で、先端科学と美術の一致に少し驚きました。
話がちょっと難しくなりすぎました。
プールの水面に戻しましょう。
水面。
面ですから、表と裏がありますね。
でもその実態を確かめることはできません。
光の作用(反射)で、表と裏を認識しているだけです。
でも、水面はそこにあって、大気と水とを別けています。
そして、遙か昔に、その水面を超えて、人間は大気で生活することになり、今日に至っています。
(この過程は、草加さんのもう一つのテーマでもあります。)
ご高覧よろしくお願い致します。
2001年藍画廊個展
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会期
2010年8月23日(月)-8月28日(土)
11:30am-7:00pm(最終日6:00pm)
会場案内