短い夏の残暑が厳しい毎日です。
それでも夕暮れ時になれば、涼を含んだ風が窓から優しく吹きつけます。
日差しを避けるカーテンを揺らしながら。
草加登起夫展の展示風景です。
画廊入口から見て正面と右側の壁面です。
作品は左から、「カーテン」(油彩・キャンバス 65×53.2cm)、
「カーテン」(油彩・キャンバス 53×45.5cm)、
「カーテン」(油彩・キャンバス 117×91cm)。
入口横右の壁面です。
同じく左から、「カーテン」(パステル・紙 38×27cm)、
「カーテン」(パステル・紙 38×27cm)。
正面と左側の壁面です。
左から、「カーテン」(アクリル・キャンバス 91×110.7cm)、
「カーテン」(油彩・キャンバス 33.4×24.3cm)、
「カーテン」(アクリル・キャンバス 53.2×45.6cm)。
左側と入口横左の壁面です。
右は上でご紹介した作品です。
左は、「カーテン」(油彩・キャンバス 22×27.3cm)。
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最後は道路側ウインドウの作品です。 「カーテン」(油彩・キャンバス 22×27.3cm)。 |
使用画材やサイズはマチマチですが、タイトルどおりすべてカーテンを描いた平面の展覧会です。
いろいろな表情のカーテンが描かれていますね。
光が内側、つまり照明が室内にあって外が暗いと、カーテンのコントラストは強くなります。
カッチリとした物質感が出ます。
例えばこの作品。
壁のように内側と外側を隔てるカーテンです。
もし光が内側より外の方が強いと、次の作品のようになります。
光を孕んだ優しいカーテンですね。
(使用画材とサイズが違いますが、多分同じグリーンのカーテンではないでしょうか。)
外の光がもっと強く、布地がより薄いと、カーテンはそこに外の景色を映します。
窓辺の木立が映っています。
光によって有様を変えるカーテン、面白いですね。
草加さんは何故今回カーテンを描いたのでしょうか。
草加さんの表現活動は一貫して「膜(まく)」に拘(こだわ)っています。
「膜」、もしくはその「膜」によって成り立っている形態や空間に拘っています。
カーテンも「膜」なんですね、草加さんにとっては。
というよりは、草加さんにとってカーテンは「膜」そのものなんです。
カーテンは内と外を隔てたり(内側、外側を隠す)、陽を遮る用途を持っています。
しかしカーテンはその用途とは別に、まるで生き物のような振舞いもします。
内側であったり外側であったり、その両方でもあったりする。
ここでは「膜」は単なる区切りではなくて、「膜」そのものとして世界に存在します。
そう考えたとき、今見える眼前の形態の意味は少なからず変わってしまいます。
それは恐ろしい崩壊ではなくて、新たなる視点と世界の獲得としての変化です。
これはわたしの想像ですが、草加さんは「膜」をエネルギーのようなものとして捉えているのではないでしょうか。
カーテンは布でもあるけど、エネルギーでもある。
そう考えて作品を見てみると、草加さんがカーテンの絵で会場を埋めた意図に近づいたような気がします。
下の作品は、他の作品とは異り、直接カーテンを描いたものではありません。
室内にあるピアノの、鏡のような表面に映ったカーテンを描いた作品です。
ある意味では、「膜」そのものを写し取ろうとした試みかもしれません。
ご高覧よろしく御願いいたします。
2001年藍画廊個展
2002年藍画廊個展
2003年8月25日(月)-30日(土)
11:30am-7:00pm(最終日6:00pm)
会場案内
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