草加登起夫展の展示風景です。
画廊入口から見て、正面と右側の壁面です。 左はF15号、右はF10号の油彩です。 |
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入口横右の壁面です。 |
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左側の壁面です。 左は全紙のカラー写真をパネルにしたものです。 中はF6号、右はF8号の油彩です。 作品タイトルは写真作品が「カーテン」で、他はすべて「heat baby」です。 画廊内の作品は以上の八点で、その他道路側ウィンドウに一点の展示があります。 |
油彩作品の被写体は、クマやイヌの「ぬいぐるみ」のようです。
上の展示風景、通常の平面展示と何か違っていますね。
作品と壁の間に隙間があって、作品が浮いているような印象です。
横から撮影してみましょう。
入口横右壁面の三点です。
キャンバスの後ろに、何と、描かれた「ぬいぐるみ」そのものが貼り付けられています。
油彩作品は全部このような構造になっています。
こちらは右側壁面の作品ですが、スヌーピーのようなイヌの「ぬいぐるみ」が後ろにあって、油彩はそれを描いたものです。
しかし、油彩は「ぬいぐるみ」を見て描いたものではありません。
「ぬいぐるみ」は描く前にキャンバスの後ろに貼り付けらるので、記憶と想像で描いたものです。
一点だけ展示された「カーテン」の写真作品ですが、この作品も写真だけではありません。
写真の後ろに鏡が貼り付けられています。
(鏡の表面は見る人の方を向いています。)
鏡は写真の裏側を映しているはずですが、こちら側から伺い知れません。
草加さんが一貫して表現のテーマにしているものに、被膜、膜があります。
絵画(平面)とは観念的なスクリーン(何もない場所)ではなくて、具体的な膜ではないか。
膜には表があって裏があり、表面という面もある。
草加さんが「カーテン」に着目している理由はそこにあります。
左側壁面の油彩です。 タイトルの「heat baby」は草加さんの造語で、熱を出すことによって何かを訴えたり、存在を主張する赤ん坊の意味です。 「ぬいぐるみ」には、そんな赤ん坊のイメージが込められています。 当然、記憶と想像で描いた油彩にもそれは反映されているはずです。 |
草加さんの作品は、難解のようで解りやすく、解りやすいようで難解です。
恐らく問題にしているのは、絵画の暗黙の約束事です。
キャンバスや紙を「何もない白い場所」としているような、約束事です。
(この約束事は絵画の始原からあったものではなくて、後年発生したものです。)
草加さんの作品が際立っているのは、約束事で成立している作品の中に、その約束事を破る構造を持ち込んでいることです。
何故そんなことをしているかといえば、絵画の可能性と限界を見極めたいという欲求があるからです。
それは同時に、絵画が対象とする世界の有り様により近づきたいという欲求です。
その二つ欲求の交差した地点に作品があります。
わたしはその地点に投げ出されて、迷いながらも惹きつけられています。
ご高覧よろしくお願いいたします。
2001年藍画廊個展
2002年藍画廊個展
2003年藍画廊個展
2004年藍画廊個展