藍 画 廊



新世代への視点2010
伊藤知宏展
ITO Chihiro


東京現代美術画廊会議(銀座、京橋地区の10の画廊で発足し、現在は11の画廊)は、1993年より「-画廊からの発言- 新世代への視点」を主催してまいりました。
11回目の開催となる2010年展の藍画廊の展示は、伊藤知宏さんの平面作品です。



各壁面の展示をご覧下さい。



画廊入口から見て、左側の壁面です。
作品タイトル「“On The Farm” ̶そこにあるものをえがくー 1.0」で、サイズは148(H)×430(W)cmです。



正面の壁面です。
「“On The Farm” ̶そこにあるものをえがくー 2.0」で148×330です。



右側の壁面です。
「“On The Farm” ̶そこにあるものをえがくー 3.0」で148×370です。



入口横の壁面です。
「“On The Farm” ̶そこにあるものをえがくー 4.0」で148×330です。

以上の4点が展示室の展示で、作品はすべてペンキ・アクリル・キャンバスを使用しています。
その他小展示室に2点の小品があり、こちらはペンキ・アクリル・木材を使用しています。
(会期中に小品は増える予定です。)



左壁面の「“On The Farm” ̶そこにあるものをえがくー 1.0」です。
今回の展示室の展示はすべて大作ですが、その中でも最も大きく、横幅が4m30cmもある作品です。
何が描かれているかといえば、大根です。
ちょっと分かり難いと思いますが、左右に三本の大根が描かれていて、それが対称(シンメトリー)の構図になっています。



正面壁面の「“On The Farm” ̶そこにあるものをえがくー 2.0」です。
“On The Farm”は「農園にて」という意味合いで、これはブロッコリーを描いています。
4点中唯一のカラー作品です。



右壁面の「“On The Farm” ̶そこにあるものをえがくー 3.0」です。
これは何を描いているか分かりますね。
そうです、キャベツを中心に他の野菜と組み合わせています。



入口横壁面の作品、「“On The Farm” ̶そこにあるものをえがくー 4.0」です。
これは難しいですね。
正解はブロッコリーで、真上から描いているそうです。

「-画廊からの発言- 新世代への視点」のパンフレットには各画廊の作家の作品と、作家の短いコメントが掲載されています。
伊藤知宏さんのコメントを以下に転載いたします。

私は平面の作家で、"身の回りにある物を線で描く"という作品を制作しています。
ある日いつも見ている椿の花の生け垣が在りそこに近寄ってみると椿の花は何か分けの解 らない色と形の固まりにみえました。
なぜ、私が身の回りの物をえがくのかというと、ただ、絵を描く前にモチーフを手に取り たい、観察したいという事だけではありません。
目の前にある"そこにあるものをえがく"ことによって身の回りの物を知る為の手段の一つ であります。
また、"線"で絵画を描くということは東洋的な水墨画や浮世絵の肉筆画や版画の表現方法 から繋がっていると考えます。
私は、"線をドローイングのように引く"という事に強く関心を持っています。



野菜は身の回りの身近なもので、人間にとって必要不可欠なものです。
かつては自然のサイクルの中で野菜は栽培され、基本的には自家栽培、消費されました。
しかし市場経済の発達と共に、野菜も商品として側面が強くなり、半ば工業製品になっています。
徐々に多くの人が土から離れていきました。
産地も国内とは限らず、世界中の野菜が日本に入ってきています。

あるとき伊藤さんは、野菜を昔どおりの農法で作っている人と知り合ったそうです。
採れたての野菜を食した伊藤さんは、その味に驚きました。
市場(スーパー)などで売っている野菜とは、味がまったく違ったからです。
その味は、自然の、大地の味がしたそうです。
その時から今回の野菜シリーズの構想が始まりました。

採れたての野菜の姿と味を描くために、数々の工夫を凝らして、キャンバスに向かいました。
描法はコメントに書いてある通り、“線”で描くことを念頭に置いています。
画材はいつもどおり、チープなペンキを大量に使って、キャンバスを木枠なしで壁面に無造作に貼り付けています。

4点の大作を見て、それが全部野菜を描いていることを分かる人は少ないでしょう。
具象のような抽象なような何かが描かれている、としか分からない作品もあると思います。
しかし会場の空間には、確たるメッセージがあって、それはジワジワと伝わってきます。

このチープだが力の溢れた画面からは、今ある社会への異議申し立てがあります。
それはある意味「パンク」な色彩ですが、単にモノを壊す、破壊することとは正反対の行為です。
何かを作ろう、何かを作りかえようとする、ポジティブな思考がその中心を占めています。

自然農法で作られた野菜に感動して、それを絵に描く。
ことは、そう単純なことではありません。
自分が味わった野菜の姿と味を、自分の描法で、自分の絵として、自立させる。
それがすべて成功しているかどうかは、わたしにも分かりません。
しかし、その意志は充分に伝わってきますし、作品に反映されていると思います。
ここには、ありきたりの大地という言葉からは感じることの出来ない、土が育むエネルギーが表現されているからです。

ご高覧よろしくお願い致します。



「新世代への視点2010」公式Webサイト
同時開催 新世代への視点2010 画廊からの発言'10 小品展

2005年藍画廊個展
2006年藍画廊個展
2007年藍画廊個展
2008年藍画廊個展
2008年藍画廊「ラストダンスは私に」
iGallery's eye vol.6伊藤知宏展 "Rakugaki"

作家Webサイト



会期

2010年7月26日(月)-8月7日(土)

日曜休廊

11:30am-7:00pm(最終日6:00pm)


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