藍 画 廊



内田かんぬ展
UCHIDA Kannu


内田かんぬ展の展示風景です。
画廊入口から見て、正面と右側の壁面です。



左から、作品タイトル「かど」で、サイズは
50(H)×50(W)×3.5(D)cm、
「もの干し」で、20×20×3.5cm、
「シャワーカーテンフック」で、12×12×3.5cm、
「しょうゆの頭」で、162×162×3.5cmです。



入口横右の壁面です。
「折りたたみ」で、70×70×3.5cmです。



左側の壁面です。
左から、「手組み」で、20×20×3.5cm、
「吊革の手」で、120×120×3.5cmです。

以上の七点で本展は構成されています。
作品は、ベニヤ、綿布、ジェッソ、ジェッソメディウム、アクリルガッシュを使用しています。



内田さんの描写は極端なクローズアップが多いので、何が描かれているのか分からないことがあります。
それを解明するのが、作品を見る楽しさの一つになっています。
上の「吊革の手」は、珍しく一目瞭然の作品ですね。

作品の形式は従来と同じで、正方形の画面、フラットな描写、コントラストの強い表現などが特徴です。
今回の作品は、色彩が軟らかくなった印象を受けます。
特にこの作品と、対になっているような下の作品です。



右壁面の「しょうゆの頭」です。
市販のしょうゆ瓶の頭の部分ですね。
しかし、手の動き(配置)が妙です。

実は、しょうゆの頭を洗っている場面の手のクローズアップで、画面の(見えない)上部には水道の栓があります。
つまり、これも内田さんの描写の特徴である省略で、手の動きに表現の焦点をあてています。



正面壁面の「かど」ですが、これは分からないですね。
わたしもかなり考えましたが、何を描いたのか不明です。

正解は、システムキッチンなどの上部にある戸棚です。
戸棚を下から見上げた図で、「かど」とはそのことでした。



小品二点です。
左は「手組み」で、右は「もの干し」です。

「手組み」は、文字通り手を組んでいるところを描いたものです。
格子柄(クモの巣に見えますね)の洋服を着用した、内田さんの自画像です。
「もの干し」は、もの干しのプラスチックのクリップのクローズアップです。
個人的には一番好きな作品で、配色とコントラスト、地と図のバランスに見入りました。


正面壁面の「シャワーカーテンフック」です。
一番小さな作品で、このサイズも内田さんが好んで描く大きさです。
三色だけのシンプルな描写ですが、展示のアクセントになっていて、存在感のある作品です。


内田さんの近年の作品は、モノのクローズアップとそれと関わる手の表情が中心になっています。
人間の身体の中で、手は最も直接にモノと関わりあいを持っています。
猫や犬が口で、象が鼻で関わるように、人間は手でモノと関わります。
人間の手は、熟練すると精密機器を上回る精緻な動きを獲得します。
職人はコンマ数ミリ以下の厚みでさえ感知し、複雑な加工を容易くこなします。

一方で、手は何気ない仕草もします。
頭を掻いたり、顎を撫でたり、腕を組んだり。
それこそ一日中、何かをしています。

内田さんは、モノのクローズアップで、モノが普段見せない表情を捉えます。
手も同じで、省略された画面で、日常的な手の表情を描写します。
(わたし達の眼が省略している、日常の手の動きや表情を。)
その集積は、一つの世界観といって良いと思います。
それだけの強度と視点の確かさがあるからです。
クローズアップされているのは、近代的合理とはおよそ異なる、何気ないモノや手が見せる親密な世界です。

ご高覧よろしくお願いいたします。

2001年藍画廊個展
大胆不敵展(内田かんぬ/佐藤梨香/綿引展子)
2004年藍画廊個展
2005年藍画廊個展


会期

2006年5月8日(月)-5月13日(土)


11:30am-7:00pm(最終日6:00pm)


会場案内