藍 画 廊



鈴木敦子展
フウケイ
SUZUKI Atsuko

鈴木敦子展の展示風景です。



画廊入口から見て、左側の壁面です。
左から、タイトル「ミズウミ」でサイズ100.2 (H)× 100.1(W)(S40)cmで、水彩 ・ 油彩 ・ 糸 ・ ジェッソ ・ 麻 ・ 綿布を使用、「ツキ」で35.3 × 35.2(S5)、墨・麻布を使用しています。



正面の壁面です。
左から、「ヤマ」で32 × 41.3(F6)、アクリル絵具・油彩・ジェッソ・綿布を使用、「シロ」で61 × 41.2(M12)、油彩、キャンバスを使用、「ミドリ」で33.6 × 24.3(F4)、オイルパステル、キャンバスを使用しています。



右側の壁面です。
左から、「ミズイロ」で100.3 × 100.3(S40)、「ソラ」で100.3 × 100.2(S40)で、2点共水彩、糸、麻、綿布を使用しています。



入口横の壁面です。
「アメ」で145.8 × 89.6(M80)、油彩、染料、ジェッソ、糸、綿布を使用しています。

以上の8点が展示室の展示で、その他小展示室に2点、事務室壁面に1点の展示があります。



左壁面の「ミズウミ」です。
タイトル通り、ミズウミ(湖)を描いたものですが、見方は多様にできます。
湖面の描写として見てもよし、水面の反射として見てもよし、あるいは抽象画として見てもかまいません。
鈴木さんの絵画の特質は、この作品のように画面に糸で刺繍が施してあることです。



同じく左壁面の「ツキ」です。
これはシンプルに墨一色で仕上げた作品です。
ツキ(月)の部分は麻布そのまま。
それがとても効果的で、朧月夜が美しく描写されています。



正面壁面の「ヤマ」です。
これはアクリルと油彩の作品ですが、制作過程が面白い作品です。
消しゴムで丸いスタンプを作り、それを画面に押していきます。
画面を埋め尽くしたころ、それを見て、ヤマ(山)に見えることに気が付きます。
そのヤマは、車窓から見た、かつて訪れた山梨のヤマです。
後はそれに色を施して、仕上げたそうです。



同じく正面壁面の「シロ」です。
この作品は展示作品の中でも異色で、ハッキリと具象と分かります。
樹木が描かれていますね。
シロ(白)は雪の白でしょうか。



右壁面の「ミズイロ」です。
透明度の高い薄い布を使っているので、キャンバスの木枠が薄らと見えています。
それと、糸。
この画面では分かりませんが、彩色の部分に効果的lに使われています。



同じく右壁面の「ソラ」です。
これも「ミズイロ」同様、薄い布でほんのりと背面を透き通らせています。
又、彩色以外の部分は地の布そのもので、何も塗ってありません。
地と図の使い方が「ミズイロ」と同じく、秀逸。



上は「ソラ」の糸を使った部分のクローズアップです。
この糸が何とも効果的。
画面に布の柔らかな印象を与えています。



最後は入口横壁面の「アメ」です。
白いアメ(雨)が降っているのがお分かりでしょうか。
この作品、刺繍を大々的に用いた作品で、地の何も塗っていない布との対比が興味深い作品です。



日々の生活の中で見てきた風景や沈殿して奥底にある記憶を、手を動かしながら、素材とつなぎ合わせて形におこしていく。
そうしてできてきたものを素直に受けとめていきたいと思う。


本展に寄せた鈴木さんのコメントです。
簡潔ですが、要を得ています。
日常の中で見てきた風景、あるいは記憶の底にある風景、そういったものを手を動かし(描く、縫う)、作品という形にしていく。
それが今回の「フウケイ」ですね。

このカタカナのフウケイという言葉遣いや、題名のカタカナ。
具象と抽象を行き来する鈴木さんの作品を巧みに表しています。
具象として見て良し、抽象として見て良し。
そういった区別に関係なく、見て良し。
そんな鈴木さんの作風を題名のカタカナが代弁しているような気がします。

しかし、渋いフウケイですね。
派手さがない。
だけど、品の良い色気があります。
ここ、とても大事なことだと思いますが、まずもって品が良い。
こんな品の良い絵画は滅多にないというか、まず見たことがない。
それほど、品が良い。

じゃ、品ってなんでしょうね。
品格、人柄、品位。
それらをひっくるめた、姿勢や態度、その表れのことでしょうか。
それプラス、鈴木さんの作品の場合、ほんのりとした色気。
それも、日本的な品のある色気。
形容がダブってしまいましたが、この品のある色気は何ともいえず目に優しく、嬉しいですね。

その品を支えているのが、繊細な神経に裏打ちされた色使い。
糸の刺繍の効果的な使用と配置。
地の布の見せ方。
工芸の文様を思わせる、パターンの用い方。
それらの組み合わせとして、鈴木さんの絵画は存在しています。

しかし、色気のある、品のあるフウケイです。
日本の四季は、これほどにも色気と品がある。
才ある人にかかると、フウケイはこのように表現されてしまう。
しかも、その才をひけらかさない奥ゆかしさが、品そのもののですね。
必見、と申し上げて宜しいかと存じます。

ご高覧よろしくお願い致します。


2006年藍画廊個展
2007年藍画廊個展
新世代への視点2008/鈴木敦子展

2010年藍画廊個展

 

会期

2012年2月27日(月)ー3月10日(土)

日曜休廊

11:30amー7:00pm(最終日6:00pm)



会場案内