藍 画 廊



鈴木敦子展
SUZUKI Atsuko


鈴木敦子展の展示風景です。


画廊入口から見て、正面と右側の壁面です。

左から、untitled(水彩・油彩・綿布)で、100(H)×100(W)cm、
untitled(インク・油彩・綿布)で、18.1×14.2cm、
untitled(水彩・油彩・綿布)で、14.2×18.1cm
です。
画廊入口横右の壁面です。

左から、untitled(水彩・綿布)で、27.3×41.1cm、
「snow」(水彩・油彩・綿布)で、45.7×27.5cmです。
左側の壁面です。

左から、「fog」(油彩・綿布)で、31.8×41.1cm、
「rain」(糸・パステル・油彩・綿布)で、72.9×116.8cmです。


以上が画廊内の展示作品七点で、その他道路側ウィンドウに一点、芳名帳スペースに三点の展示があります。



左壁面の「rain」です。
降り出した雨が乾いたアスファルトに染みを作っている様子、に見えます。
雨が線ではなくて点で表現されていますが、作品の構造は意外に複雑です。
拡大して見てみましょう。



「rain」は、糸・パステル・油彩・綿布で制作されています。
まず綿布に糸で円を無作為に縫っていきます。
上の画像で白い縫い目のある部分ですね。
その円に触発されるようにして、パステルと油彩でペインティングされています。

このプロセスの最初は文字通り白紙の状態で、糸の円が鈴木さんの内部に働きかけます。
そこからイメージとペイントという手作業が相互に影響を与えながら、絵を形作っていきます。
つまり、rain=雨は途中からテーマとして浮上してきます。
いわば、自分自身の問題意識を自然な形で導き出す方法といえます。

糸や布への拘(こだわり)と縫うという手の仕事。
それがこの作品のベースにあります。
描かれた形は連鎖していって、 最終的に一つの空間を形成します。
この方法論は他の作品にも共通しています。



正面壁面の無題の作品です。
木の葉が重なったような図柄ですね。
鈴木さんが意識しているかどうか不明ですが、紋様、それも日本的な紋様と近似があります。
アプローチはまったく違うのですが、方法論や自然観も、共通するところがあると思います。
それでいて、唯一無二の自分の表現として完成されています。
等身大の表現として、説得力があります。



入口横右壁面の「snow」の部分です。

「snow」というタイトルが付いていなければ、雪に見えないかもしれません。
抽象的な絵画として観賞するでしょう。
でも、「snow」のタイトルで、紛れもない雪に見えてきます。
不思議です。

これは鈴木さんの考えに深く繋がっていると思います。
現象や事物を小さな単位の集合として見る。
そしてその単位は相互に影響しあって、現象や事物となる。

水の波紋(同タイトルの作品が芳名帳スペースにあり)を思い浮かべて下さい。
落とした石が、水に作用して、その連続が波紋となります。
重要なのは、水を小さな粒子のような単位の集まりとその作用と考えることです。
そしてそれと同じことを、鈴木さんは作品制作で為しています。
(その伝でいけば、雪は鈴木さんが降らせている、ことになりますね。)



最後は小品二点のご紹介です。
左は左壁面の「fog」、右は右壁面の無題です。

知らない間に拡がったfog=霧の怖い経験が基になっているそうですが、この作品も白紙の状態から始められました。
イメージとしての霧に結実したのは中途からです。
右の作品も最初に描いた像を消して(上塗りして)、そこに生じたグリッドのようなものを点描で連鎖させた作品です。
木の枝に見えますね。

鈴木さんの作品は、自然現象や風景の概念(自然観)と制作の方法を重ねています。
それを介在しているのは、手による作業です。
手が考える作業です。
手は、頭よりずっと上等かもしれませんね。

ご高覧よろしくお願いいたします。


会期

2006年2月6日(月)-2月11日(土)


11:30am-7:00pm(最終日6:00pm)


会場案内