みわはるき展《くちびるIII》の展示風景です。
画廊入口から見て、正面と右側の壁面です。
左の立体は、タイトル「くちびる III no.3」で、サイズは12×9×9cmです。
右の下の立体四点は、「くちびる III no.4 .5.7.8」で、サイズは各12×9×9cmです。
上の小さな平面は、「くちびる III no.6」で、S3号です。
入口横右の壁面です。 左下の小さな平面は、「くちびる III no.9」で、S3号です。 右の大きな平面は、「くちびる III no.10」で、F150号です。 |
左側の壁面です。
左は、「くちびる III no.1」で、F150号。
右の小品は、「くちびる III no.2」で、S3号です。
画廊内の展示作品は以上の十点で、その他道路側ウィンドウに三点、芳名帳スペースに二点の展示があります。
平面作品は綿布にアクリル絵具、立体作品は粘土を使用しています。
みわさんの《くちびるシリーズ》も今回で三回目です。
今回の大作、一見ではくちびる=唇に見えません。
(小品は前回までと同様、くちびるの形をしています。)
大きな楕円が、斜め上から二つ重なったように見えます。
上の楕円と下の楕円は、対照的な色相、タッチで、呼応しているようにも見えます。
もともと、みわさんの《くちびるシリーズ》の当初の作品は、くちびるを描いたものではありません。
特にモチーフも持たずに描いた作品でした。
それがたまたまくちびるに見えたので、《くちびるシリーズ》は始まりました。
その経緯から考えると、当初からみわさんは重なる二つの楕円(のようなもの)を描こうとしていたのかもしれません。
《くちびるシリーズ》は、螺旋状に一回転上に上った(下りた)のでしょうか。
今回の展示の謎である、謎の立体です。
道路側ウィンドウの作品ですが、画廊内にも同様の作品が五点展示されています。
謎ですね〜。
謎を、みわさん本人に訊いてみました。
この立体、元の造形はギリシャ彫刻に見えます。
この推測はほぼ当たりで、所謂(いわゆる)彫刻らしい彫刻をモデルにしているそうです。
なぜ横になっていて、眼とか口がハッキリしていないかといえば、彫刻の首から上が転げ落ちて風化したからです。
そのような状態を、みわさんはとても好きで、いつか作品にしたいと思っていたそうです。
なるほど。
上と同じく道路側ウィンドウの作品です。
なぜ、みわさんが斯様(かよう)な状態の風化した彫刻が好きかといえば、それが最初にまとっていた多様な意味合いがそぎ落ちて、彫刻(立体)そのものになっているからです。
ちょっと難しい表現ですが、作品が作品そのものとして自立しているから、です。
ゴロンと転がっている(元)彫刻は、時と自然の風化作用で、モノそのものとして存在しています。
その地点から、みわさんは表現活動を開始されています。
近代西洋美術の始点のちょっと前、みわさんの言葉では「プレモダン」が、そのポジションです。
それは今回の小さな立体に限りません。
みわさんの本業である画業(平面制作)にこそ、当てはまるポジションです。
テレビの画面で、引き下ろされる偶像をご覧になったことがあると思います。
社会主義国家の崩壊のシンボルとして、映しだされる映像です。
この映像は多分に情報操作の意味合いがあって、裏側にも想像力を働かせなければなりません。
民主化の中身を見る必要があるのです。
それとは違って、みわさんの偶像破壊は、何もないところから何かを創りだす行為です。
このドン・キホーテのような試みは、一生涯の仕事です。
ということは、見る方も一生涯の仕事、ですね。
ご高覧よろしくお願いいたします。
2001年藍画廊個展
2002年藍画廊個展
2003年藍画廊個展
2004年藍画廊個展
「美」と「術」2001年展