池田仁美展の展示風景です。
画廊入口から見て、正面と右側の壁面です。 左の五点は同サイズで、41(H)×32(W)cm、 右は103×73cmです。 |
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入口横右の壁面です。 三点とも同サイズで、30×21cmです。 |
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左側の壁面です。 左は103×73cm、 右は25.5×18cmです。 |
以上の十一点が画廊内の展示で、その他道路側ウィンドウに二点の展示があります。
作品はすべてパネルに洋紙、パステルを使用しています。
左壁面の作品です。
平面作品ですが、池田さんの描画方は独特です。
まず、パネルに水張りした紙にパステルで描きます。
ここまでは普通ですが、そこに千切った紙を貼り、又描きます。
それを剥がして、又千切った紙を貼り、描く。
その繰り返しです。
ポイントは、(無理に)剥がしたときに生じる白く薄い裂け目です。
それを効果的に使っています。
同じく左壁面の小さな作品です。 剥がした紙の白い部分と、下部のオレンジの描画が無理なく溶け合っています。 |
正面壁面の連作五点です。
右から左へ、徐々に緑が濃くなっています。
しかし各作品の層の厚さはほぼ同じです。
出発点が同じで、終点(フィニッシュ)が異なる作品の連なりに見えます。
右壁面の作品です。
今回の展示の特徴は、紙の多い部分と描画の部分が、地平線のようなラインで上下で区切られた作品が多いことです。
境目はグラデーションのようにぼやけています。
入口横右壁面の三点です。
同じ構図で色合いを変えた連作です。
前回の個展で、池田さんは紙とパステルの一体化について話してくれました。
描くもの(パステル)と描かれるもの(紙)を等価に扱い、それを溶け合わせる。
それが池田さんの制作の原点です。
本展でそれが特に顕著な作品は、左壁面の小さなオレンジの作品です。
地と図、支持体(紙)と絵具(パステル)が溶け合うようにして、一つの状態を出現させています。
なぜそのような技法に池田さんは惹かれ、描き続けているのでしょうか。
これは穿(うが)った見方かもしれませんが、紙とパステルを世界と人に置き換えてみたらどうでしょうか。
世界という地の中で、人は図として生きている。
人間中心主義の構図では、そうなります。
しかし人が世界に登場した時からそうだったわけではありません。
いつからか、そうなったのです。
それも近い過去からです。
世界と人を溶け合わせることは、いわば回復になります。
元の状態に戻ることです。
流行の言葉で、人と自然の共生があります。
残念ながら、その多くは人間中心主義のバリエーションに過ぎません。
元に戻るのではなく、進歩を緩やかにしたり、環境に優しい進歩を目指しているだけです。
溶け合うとは、いってみればラジカルな共生で、人と自然の境をなくすことです。
それこそが本来の共生です。
池田さんの絵画は、そのような意味で、ラジカルな回復が主題になっていると思います。
ご高覧よろしくお願いいたします。
2003年藍画廊個展
2005年藍画廊個展
2006年藍画廊個展