池田仁美展の展示風景です。
展示作品はすべて、パネルに洋紙、パステルを使用した平面です。
各壁面ごとの展示をご覧いただきます。
画廊入口から見て、正面と右側の壁面です。 正面の三点は同サイズで、1030(H)×728(W)mmで、 右は728×1030mmです。 |
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入口横右の壁面です。 三点とも同サイズで、320×412mmです。 |
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左側の壁面です。 サイズは728×1030mmです。 |
画廊内の展示は以上の八点で、その他道路側ウィンドウに一点の展示があります。
左側壁面の作品です。
一見すると、紙にパステルの描画です。
作品に近づいて見ると、表面がザラついていて、上半分は紙の裏側から描いたような印象を受けます。
池田さんの制作技法は、まず水張りした紙にパステルで描き、その上に千切った紙を貼って描き、それを剥がして、又千切った紙を貼って描く。
その繰り返しです。
紙と描画は何層にも重なっていて、同じ色も重なりで変化しています。
正面壁面の三点です。
今回の作品の特徴は、色の部分と白い部分が、色面構成の抽象画のようにセパレートされていることです。
これは最初からのビジョンではなく、制作途中に決定されました。
二つか三つに区分された(色の集合の)色面が並んだ様子は、国旗を連想させますね。
入口横右の壁面の作品です。 この壁面の三点は色面の区分がなく、シンプルな構成になっています。 その分、描画のタッチに目が行きます。 |
明解な表現に見える池田さんの作品の構造は、実はかなり複雑です。
表現された絵画の秩序も、見た目ほど単純ではありません。
複雑に時間と空間が入り乱れ、(渾沌とした)一つの状態を表しています。
その状態は、「生きている、生きる」といった状態と同義です。
池田さんに、なぜ紙を千切って貼り描くのか、訊ねてみました。
紙とパステルを一体化させる為、という答えでした。
一般的に紙やキャンバスは絵画を支える物質で、その白い表面は「何もない」ことを暗黙の了解にしています。
つまり、紙の白とは不在のことです。
池田さんにとって、紙や紙の白とはそのようなものではなく、絵具(パステル)と等価な物質です。
そこに存在しているものなのです。
等価な紙と絵具を一体化させる、それが制作の原点であり、池田さんの表現の基です。
制作は目論見と偶然が積み重なって、進行します。
紙は不規則に千切れ、貼ると下の色は薄くなったり、ほとんど見えなくなります。
人間の記憶のように、時間と共に絵画は様相を変えていきます。
そして、一体化が為されたと判断された時、(多分)池田さんは筆と紙を置くのではないでしょうか。
紙と絵具の一体化。
それが意味するものは、かなり深いと思います。
2003年藍画廊個展
2005年藍画廊個展