藍 画 廊


金井聰和展
ー食卓ー
KANAI Toshikazu


金井聰和展の展示風景です。






以上の3点で金井聰和展は構成されています。
作品の詳細をご覧下さい。




画廊入口から見て、正面壁面前の作品です。
タイトル「豊穣」(陶、合板、柿渋)でサイズ555 × 900mmです。




右壁面前の作品です。
「楽土」(陶、合板、塗料)で575 × 900mmです。




入口横壁面前の作品です。
「獣の庭」(陶、枯れ枝、合板、墨)で950 × 900mmです。



食卓の脚です。

〈作家コメント〉

普段、ご飯が並んだり片付いたりする食卓という空間は考えてみれば不思議なもので、社会的、経済的、歴史的、文化的、宗教的、家政学的諸要素から成る意外に複雑な構造を持ち、遠くから見ると幻のように儚げに揺らめくのだ。

画廊に設置された三つの作品は食卓がモチーフになっています。
この食卓、金井さんの家の食卓の形、サイズをそのまま再現したものです。
円い、脚の短い食卓は、むかし卓袱台(ちゃぶだい)と言われたものと同じです。
卓袱台は使わない時は脚を畳んで壁に立てかける仕様で、居住空間の狭さを補うポータブルな食卓でした。
卓袱台は食事はもちろん、お茶の時間にも使われて、その部屋は茶の間と呼ばれました。

茶の間は家族が食事をしたり、談笑したりする部屋で、言わば家族のコミュニケーションのスペースです。
その中心にあるのが卓袱台ですから、食卓は単なるテーブルではなく、家の中心でもありました。
それが四角ではなくて、概ね円い。
これはスペースユーティリティの問題だけではなく、家族関係も含まれていると思います
と言っても卓袱台は明治以降の近代の産物で、それ以前はお膳が基本でしたから、円卓はどこか戦後の家父長制の崩壊の匂いがします。
序列が崩れ、対等な関係への変化、つまりは昭和の民主的な家庭を象徴するもので、円い卓袱台も茶の間もそのような時代背景を持っています。

ところが、ある時から家族が円い卓袱台を囲まなくなった。
それを象徴したのが映画『家族ゲーム』で、横一列に並んで食事をするシーンが話題を呼びました。
映画の公開は1983年で、バブル直前の時期です。
この頃から家庭に個室が当たり前になり、食事の時間もバラバラになり、茶の間が、卓袱台が消えていきました。
家族の崩壊と言われた現象ですが、左様に食卓とは(金井さんのコメントのように)複雑な構造を持っています。
それを多面的に表現したのが今回の作品です。

長々と家族の話をしたのは、食卓が家族と切り離せない、核のような存在だと思ったからです。
それが家族制度の歴史や文化と深い関係があり、ひいては食の社会性や宗教性にも関わりを持っています。
金井さんの技法の中心になるのは陶で、その特性が作品に遺憾なく発揮されています。
獣(けだもの)、人体、花、そして食卓の脚。
陶を使った巧みな造形と、そこに集約された作家の思考の深さ。
ミニマルでありながら、豊かで想像力に富んだ表現。
食卓、食が表すものはヒトの歴史です。
狩猟採集の時代からコンビニの惣菜、冷凍食品の時代まで、ヒトは食べて、家族や自然とコミュニケーションしてきたのです。
何ともレンジの広い、かつ簡潔な金井さんの美術ではないでしょうか。

ご高覧よろしくお願い致します。


プライスリスト

2004年藍画廊個展
2013年藍画廊個展

2015年藍画廊個展
2016年藍画廊個展

2018年7月2日(月)ー7日(土)
11:30amー7:00pm(最終日6:00pm)


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