藍 画 廊



土居隆範展
・・・表面の位置について・・・
DOI Takanori


土居隆範展の展示風景です。



画廊入口から見て、左側の壁面です。
左から、タイトル「Position of S 1001-2」で、サイズ47.7(H)×62.8(W)cm、「Position of S 1001-3」で62.0×95.7、「Position of S 1001-4」で47.4×62.6です。



正面の壁面です。
左から「Position of S 1002-1」で47.8×63.0、「Position of S 1002-2」で79.3×63.3です。



右の壁面です。
左から「Position of S 1003-1」で47.0×62.0、「Position of S 1003-2」で62.0×95.5、「Position of S 1003-3」で23.8×31.4です。



入口横の壁面です。
左から「Position of S 1004-1」で48.2×62.5、「Position of S 1004-2」で62.3×47.8です。

以上の10点が展示室の展示で、その他小展示室に2点の展示があります。
作品はすべてデジタルフォト・紙・水彩・アクリルを使用しています。



左壁面の「Position of S 1001-2」です。
川の橋に二羽の大きなコウノトリが見えます。
もちろんこんなに大きなコウノトリはいませんので、風景との合成です。
この画面ではよく分かりませんが、中央部分は写真(デジタルフォト)で、その周辺は水彩の描画になっています。
画面の大きく縦断している二本の帯は、等間隔の線で構成されています。



同じく左壁面の「Position of S 1001-3」です。
構図的には上の作品とほぼ同じですが、帯は三本になっています。



正面壁面の「Position of S 1002-1」です。
今度はネコですが、巨大なネコで水面にも像が映っています。

ここで簡単に土居さんの作品の構造を説明いたします。
まず基本になる風景と動物を撮影して、それをコンピュータ上で合成します。
そして画像をインクジェットでプリントし、一回り大きな紙に貼り付けます。
一方で等間隔に糸が張られたパネルを用意します。
そして、画像の紙を貼った大きな紙を、水貼りするような要領でパネルに押しつけます。
そうすると、糸の形が紙に型押しされます。
次に画像(写真)の周囲に、(写真と繋がるように)風景を描画していきます。
最後に縦に帯が残るようにマスキングしてペイントすると、型押しされた糸の形が浮き出て、擦れた帯のようなものが出現します。
縦断する帯がそれです。



右壁面の作品、「Position of S 1003-2」です。
ペリカンの首から上の部分が風景と合成されています。
風景は多摩川で、ネコとコウノトリは土居さんの郷里の川の風景です。



もう1点、右壁面のペリカンを使った作品「Position of S 1003-3」です。
後述しますが、動物とその種類の選択には特に意味はありません。
風景も同様で、意味はありませんが、遠近感の感じられる川などの水辺を選んでいます。



入口横壁面の「Position of S 1004-2」です。
正面壁面と違う種類のネコですが、両方とも野良猫を撮影したそうです。


土居さんの作品テーマは視覚のメカニズムです。
同一平面上にあっても、遠近や奥行きを感じてしまう、視覚のメカニズムを解明することです。
まず遠近感のある風景の写真が撮影されます。
そこに動物を画像を合成させます。
特に今回は大きさを誇張して、遠近感のある風景に違和感を与えています。
その目的であれば、動物の種類は特定のものである必要はなく、任意でかまいません。

写真と描画の遠近にも、微妙な違いがあります。
視覚は描写の方法や質感の違い(写真と描画)を認識しますが、一つ続きの風景として認識します。
動物と風景の違和感以上に視覚を混乱させるのは、画面を縦断する掠れた帯です。
この帯が、風景の遠近に遊ぶ目を、唐突に画面の表面に呼び戻します。
そして、表面の帯と風景の奥の間には虚の空間が生じます。

結局、わたしたちは虚の空間を、虚と知りながら、頭の中で実に変換しています。
それが視覚のメカニズムです。
そしてそれを顕わにしているのが、土居さんの表現です。

絵画とは種類が違いますが、映画も視覚のメカニズムを利用して、虚を実に変えています。
フィルムのコマとコマの間には隙間(不連続)がありますが、視覚はその流れの速さに惑わされて、動きをスムーズに認識します。
音楽の再生もそうです。
特にデジタルでは圧縮(間引き)が普通で、聴覚の特性を利用して、虚の音空間を実と思わせます。

さらにさらに想像を働かせると、認識一般における実と虚の関係に思考が及びます。
虚と実の入り交じった現実において、実とは何であって、虚の意味と役割とは・・・・・。
そこまで飛躍して考える必要はないかもしれませんが、そんな想像を誘う土居さんの作品です。

ご高覧よろしくお願い致します。


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2009年藍画廊個展



会期

2010年5月17日(月)-5月22日(土)

11:30am-7:00pm(最終日6:00pm)


会場案内