草加登起夫・なお展
KUSAKA Tokio/Nao
草加登起夫・なお展は二人展で、しかも親子の展覧会です。
お父さんの草加登起夫は毎年藍画廊で個展を開催していますが、娘さんのなおさんの藍画廊展示は初めてです。
では展示風景をご覧下さい。
画廊入口から見て、左側と正面の壁面です。
この三点は草加登起夫さんの作品です。
左から、作品タイトル『「向こう側の表面」― 水の裏側に触れるIII ―1』で、作品サイズ 90.9(W)×72.7(H)cm (F30)、
『「向こう側の表面」― 水の裏側に触れるIII ―2』で90.9×116.7 (F50)、
『「向こう側の表面」― きのう・きょう・あしたIII ―3』で130.3×162.1 (F100)です。
右側の壁面です。
この二点は草加なおさんの作品です。
左から、「家系図」で65.2×80.3 (F25)、「夏」で130.3×162.1 (F100)です。
入口横の壁面です。
これも草加なおさんの作品です。
左から、「孫裏」で130.3×89.4 (P60)、「孫表」で130.3×89.4 (P60)です。
以上の七点が展示室の展示で、その他小展示室に登起夫さんの小品が一点(ページ最上部の小さな画像)展示されています。
作品はすべてキャンバスに油彩です。
左壁面の『「向こう側の表面」― 水の裏側に触れるIII ―1』です。
前回個展と防水カメラを水中に入れて撮影し、その画像を基に描いた作品です。
モデルは娘さんで、なおさんのお姉さんです。
水中の様子と、それが鏡のように映っている水面が描かれています。
同じく左壁面の『「向こう側の表面」― 水の裏側に触れるIII ―2』です。
頭部(顔)だけ水面から出ている図ですが、草加さんが拘っているのは、水と空気を隔てる水面という面です。
その面の、確認できない存在の不思議さを従前から追求しています。
水中の三態を合成した正面壁面の『「向こう側の表面」― きのう・きょう・あしたIII ―3』です。
注目したいのは、右上の身体を浮かさせて、水上に顔だけ出して息をしている姿勢です。
この姿勢は最初の『「向こう側の表面」― 水の裏側に触れるIII ―1』と同じで、最も水中でリラックスしている姿勢です。
さて今度は、娘さんのなおさんの作品です。
右壁面の「家系図」です。
森の中の人物は、実際のなおさんの家族の家系図です。
なおさん自身は左端の座っている人物で、お父さんの登起夫さんは中央の後ろ向きの人物です。
その間の男女はお姉さんご夫婦で、お父さんの前の女性二人はお母さん。
なぜお母さんが二人かといえば、多分優しいお母さんと厳しいお母さんに分身しているから(だと思います)。
その他は飼っている動物や過去に飼っていた動物、それに妖精のような存在です。
何とも楽しい絵で、特に表情がユニーク。
難しい絵を描く(?)お父さんは後ろ向きで、難しいことを考えているように見えますね。
鮮烈な黄色が目を惹く「夏」です。
これはなおさんの幼少時代の友人を描いた絵で、春夏秋冬のシリーズになっているそうです。
幼いころの夏の思い出が、目に浮かんでくるような絵です。
![]() |
![]() |
最後は入口横壁面の謎の二点組です。
「孫裏」と「孫表」で、孫を描いたようですが、草加登起夫さんにはお孫さんはいません。
なおさんに訊いてみると、なおさんのお姉さんのお腹の中にいるお孫さんだそうです。
改めて「家系図」を見ると、確かにお姉さんのお腹は大きくなっています。
ですからこの二枚組は、今年の十月ごろ誕生するお孫さんを予見して描いた絵ということになります。
女児のポーズと部分的に葉に埋まった様子が、微笑ましい絵です。
この二人展には特にテーマはないそうです。
お二人が別個に絵を描いて、会場を半分にして展示した展覧会です。
しかし注意深く見ていると、そこに二人の作品を繋ぐものも見つかります。
草加登起夫さんは前述したように水面の面をテーマに作品を制作しています。
プールに身体を浸すと、心地よく水が身体を覆います。
この心地良さは大気中では絶対に味わえないものです。
そして身体を動かすと、水は反応して、柔らかな刺激を返してきます。
その刺激も他では味わえない気持ち良さです。
身体の力を抜き、水に預けると、身体は浮きます。
この状態は最も無理のない姿勢で、身体の自然状態ともいえます。
それは人間と水との親和性を象徴する自然さで、人が水から生まれたことを証明しているかのようです。
他方、水面上では鼻と口で呼吸が行われています。
これは空気が人間の生に不可欠なことを表しています。
目を閉じて、身体を水に任せて、水面の上で静かに呼吸する。
ここにあるのは、とても自然な生の状態です。
何もしていないのに、生きているということを最も実感できる状態です。
今回の草加登起夫さんの絵からは、そんな生の実感が伝わってきます。
他方草加なおさんの作品は家族や友人がテーマです。
そしてその絵の中には時間も描かれています。
遠い過去や近い過去、現在と近い未来。
かつて存在したもの、今存在しているもの、もうすぐ存在するもの、目に見えないが存在してもの。
「家系図」や「孫」の作品には、家族の生が活き活きと描かれています。
そして死や超自然的存在も同時に存在していて、生と断絶していません。
いや却ってそれらが生を活き活きとしているのです。
ですから、なおさんの絵からも、強く生の実感が伝わってきます。
わたし的には、この二人展のキーワードは「生」ではないかと思いました。
ご高覧よろしくお願いいたします。
2001年藍画廊個展
2002年藍画廊個展
2003年藍画廊個展
2004年藍画廊個展
2005年藍画廊個展
2006年藍画廊個展
2007年藍画廊個展
2008年藍画廊個展
会期
2009年8月24日(月)-8月29日(土)
11:30am-7:00pm(最終日6:00pm)
会場案内