「世界」2005 吉田哲也追悼展
YOSHIDA Tetsuya



iGallery企画「世界」の2005年展は、本年一月に急死された吉田哲也さんの追悼展です。
展示風景です。



画廊入口から見て、正面の壁面方向です。
手前の台座 、左は作品サイズ209×356×4mm、トタンとハンダを使用、
中央は未発表作品五点で、プラスター(石膏)を使用、
右は10×21×46mm、同じくプラスターを使用しています。

正面壁面には三点の小さな作品(針金、釘)の展示で、
作品サイズは三点共34×90mmです。

右側壁面は二点の作品(針金、釘)の展示で、
左が220×2×70mm、右が230×2×80mmです。



左側の壁面方向です。
壁面に五点の作品(トタン、ハンダ、釘)が展示されています。
作品サイズは左から、114×10×350mm、113×15×332mm、115×14×337mm、120×10×345mm、180×13×335mmです。

画廊内の展示は以上の十三点で、その他道路側ウィンドウに一点、芳名帳スペースに四点の展示があります。
それでは、台座に展示された作品からご案内していきます。


上左は1998年制作で、トタンとハンダを使用した作品です。
上右は未発表の五点で、プラスターを使用しています。
プラスターは塊(かたまり)をカットして小さなピースを作り、それを組み合わせて接着してあります。
下左は2001年制作のプラスターの作品です。


台座はすべて自作で、作品同様の神経が使われており、作品の土台となっています。
トタンとハンダの作品は、後ほどクローズアップでご覧いただきます。

プラスターの使用は吉田くんの制作後期にあたり、下左は藍画廊で最後に発表したものです。
小さなピースを三つ組み合わせただけのミニマルな表現ですが、締まりがあって、しかも中庸(ほどほど)な作品空間です。
一つの終結点ともいえる作品で、それを新たに発展させようとしたのが上右の未発表作品と想像します。

未発表の五点は、夫々が独立した作品ですが、今回は一つの台座で展示しました。
作品はピースの数が多くなって、組合せも多様になっています。
(人や世界の)構造、繋がりを意識した作品かもしれません。
吉田くんが垣間見せた、新たな世界の提示です。
その核にあるのは、(今までと同じく)日常に存在する美しさの表現です。



正面壁面の三点(1997年制作)のうちの一点です。
針金を真ん中で曲げて釘で留めた、シンプルな作品。
たったそれだけですが、この作品の空間はとても広い。
広くて、とても心地よい。
なんて、さり気ない作品なんでしょう!

ここにあるのは、やはり「ほどほど」という中庸の精神ですね。
不足せず、過ぎない、中くらいの世界です。
「ズサン」が見事に込められた、代表作の一つです。



右側壁面の二点(1996年制作)です。
これも単純に針金を曲げて釘で留めた作品です。
でもこの曲げた角度と針金の線に、吉田くんの非凡を感じます。
この作品の存在のような、肩から力の抜けた、自然な人になりたいですね。



左側壁面の作品(1998年制作)です。
トタンを細長くカットして、コの字に曲げ、開口部に一枚のトタンをハンダ付けした作品です。
壁面には釘で固定してあります。
この作品の特徴は、トタンの微かな重みによる「たわみ」が表現に内包されていることです。
重さがあれば、自然にたわむ。
その当たり前の事実が、世界観として表現されています。
無理をして支える必要は、ないのです。



道路側ウィンドウの作品(1998年制作)です。
作品サイズは、6×15×185mmです。
カットしたトタンを折り曲げた作品です。
単純な造形も吉田くんの作品の特徴で、親しみを覚える要因です。

最後は台座の上のトタンの作品です。



トタンの表情をご覧下さい。
何も手を加えていない、トタンの表情です。
チープな金属が放つ紋様とは思えない、美しさと温度があります。
そういえば、吉田くんは「常温」というタイトルを個展に付けたことがありました。

トタン、針金、釘、プラスター。
日常に散見する建材の美しさを発見し、それを形にして提示する技術が、吉田くんの作品制作です。
その作品空間は、日常の日々がテーマです。
当たり前のように繰り返されている日々。
その中に潜む生きることの美しさを、作品という世界で表現しています。

本展の展示は、吉田哲也くんと関わりの深かった美術作家、加藤学さん、大久村綱雄さん、渡辺寛さんのご協力を仰ぎました。
御礼申し上げます。


ご高覧よろしくお願いいたします。


「世界」2005 吉田哲也追悼展/テキスト
2001年藍画廊個展
iPhoto「遺品」


iGallery企画 「世界」2005
吉田哲也追悼展
YOSHIDA Tetuya

<既発表作品と未発表作品>
2005年12月5日(月)-12月17日(土)
日曜休廊
11:30-7:00pm(最終日-6:00pm)


会場案内