松井圭太郎展
HOUSE of CARDS
MATSUI Keitaro
松井圭太郎展の展示風景です。
各壁面の展示をご覧下さい。
画廊入口から見て、左側の壁面です。
タイトル「鍵」で、サイズは30(H)×15(W)×3(D)cmです。
漆と木を使用しています。
正面の壁面です。
左から「扉 1」で180×90×17.5、「扉 2」で180×90×12.5です。
漆、麻布、木、発泡材を使用しています。
右側の壁面です。
左から「扉 3」で180×90×17、「扉 4」で180×90×15.5です。
漆、麻布、木、発泡材を使用しています。
入口横の壁面です。
「扉 5」で180×90×13です。
漆、麻布、木、発泡材を使用しています。
以上の6点で松井圭太郎展 HOUSE of CARDSは構成されています。
左壁面の「鍵」です。
扉(ドア)に必要なものは鍵で、ご覧いただいたように松井さんの作品は扉をモチーフにしています。
そうなると鍵がないと困るわけで、鍵もちゃんと制作されています。
松井さんの作品は漆を使うのが特質ですが、この鍵も漆が使われています。
本物の鍵と見間違うほど精巧に彫られた、木の鍵です。
正面壁面の「扉 1」です。
正確に扉が再現されていますが、扉はグニャリと歪んでいます。
そして扉には文字や無数の矢印のようなものが描かれています。
「扉 2」です。
この扉にもいろいろな線や文字が、落書きのように描かれています。
しかし文字の意味するところは「扉 1」とは違うようです。
右壁面の「扉 3」です。
漆らしい艶のある光沢の扉で、(画像では見えにくいのですが)横に縞が入っています。
ここで簡単に扉の制作過程を説明します。
まず発泡剤(スタイロフォーム)で扉の形を作ります。
その上に麻布を貼って漆を塗り重ねていきます。
次にカッターなどで切り込みを入れて、形を生成します。
そして顔料に漆を混ぜた絵の具で彩色していきます。
ドアノブやドアの付属物は木で制作、着色しています。
入口横壁面の「扉 5」です。
この扉も凝っていて、ホテル仕様になっています。
「please don't disturb(起こさないで下さい)」というタグがドアノブに付けられていますが、don'tが赤色で消されていて、「起こして下さい(入ってもいいですよ)」になっています。
しかも絵画のように彩色された扉をよく見ると、ジグソーパズル形式になっています。
画廊のスクゥエアな空間に取り付けられた5枚のフェイクな扉(ドア)。
画廊の入口の本物の扉を開けて中に入ると、そこは「アリス・イン・ザ・ワンダーランド」のような世界。
グニャリと捻れたドアが、貴方に開けられるのを待っています。
さて、貴方はどの扉を開けて向こう側の世界に入っていくのでしょうか。
ドアはそれぞれ性格を持っています。
気軽に何も考えずに開けるドア、慎重に考え抜いてから開けるドア、邪(横の縞)な考えから開けようとするドア、楽しく遊びながら開けるドアなどなど。
松井さんの精緻な技術と遊び心で、画廊はまさにワンダーランドです。
本展のタイトルは「HOUSE of CARDS」となっています。
その意味は、トランプで組み立てた家、あぶない(もろい)計画などです。
つまり、トランプのような紙のカードで組み立てられた、ちょっとした振動で崩れるような家=計画を意味しています。
画廊で5つの歪んだ扉を見ていると、その意が何となく分かります。
この作品の一つの面白さは、遊び心に富んだ寓意的な作品に漆が使われていることです。
通常漆といえば伝統工芸を想像しますし、実際に漆を使ったものは工芸品、実用品がほとんどです。
それがこのような現代美術作品で使われていて、しかも違和感がまったくなく、その特質が活かされています。
漆の光沢を適度にコントロールして、着彩には、漆と顔料で独特の色合いが引き出されています。
画廊の中央で迷っているわたし。
そのわたしの心の状態を顕しているかのような、5枚の扉。
もうそろそろ、わたしは決断しなければなりません。
決断したら、鍵束を持ってその扉の前に行き、鍵穴に鍵を差し込むはずです。
期待と恐れに心を膨らませながら・・・・。
ご高覧よろしくお願い致します。
2005年藍画廊個展
2008年藍画廊個展
会期
2010年12月6日(月)-12月11日(土)
11:30am-7:00pm(最終日6:00pm)
会場案内