下嶋知子展
NOSTALGHIA
SAGESHIMA Tomoko
下嶋(さげしま)知子展の展示風景です。
画廊入口から見て、左の壁面です。
左から、タイトル「NOSTALGHIA#03」で、サイズは27.3(W)×27.3(H)cm (S3)、「NOSTALGHIA#02」で116.7×90.9 (F50)、「NOSTALGHIA#04」で27.3×27.3 (S3)、「NOSTALGHIA#05」で27.3×27.3 (S3)です。
正面の壁面です。
2枚組の作品で、「NOSTALGHIA#01」で、サイズは291.0×90.9(F80×2)です。
右側の壁面です。
この壁面の作品のタイトルはすべて「untitled」で、サイズは左から45.5×38.0 (F8)、27.3×27.3 (S3)、53.0×45.5 (F10)、53.0×45.5 (F10)、116.7×91.0 (F50)、41.0×41.0(S6)、41.0×41.0(S6)です。
入口横の壁面です。
この4点のタイトルも「untitled」で、サイズは左から91.0×72.7(F30)、45.5×38.0(F8)、27.3×27.3(S3)、27.3×27.3(S3)です。
以上の16点が展示室の展示で、その他小展示室に5点、事務室壁面に1点の展示があります。
作品は小展示室の2点(油彩・紙)を除いて、すべてキャンバスに油彩です。
左壁面の「NOSTALGHIA#02」です。
今回、下嶋さんの絵画は左壁面と正面壁面が赤系、右壁面と入口横壁面が緑系の色彩になっています。
鮮やかな赤とオレンジの、光の絵画ですが、特に紅葉の風景というわけではありません。
下嶋さんの絵画に何を見るかは、見る人の自由です。
同じく左壁面の、組のように展示された 「NOSTALGHIA#04」と「NOSTALGHIA#05」です。
正面壁面の「NOSTALGHIA#01」です。
2枚組の作品で、本展のハイライトともいうべき大作です。
木々を透して溢れる光。
それは、どこかノスタルジー(郷愁)誘う光です。
右壁面の左端の作品です。
二本の樹木と木漏れ日。
いつもの下嶋さんの色彩ですが、距離感が違います。
赤系の作品同様、対象にグッと近づいて描いています。
同じく右壁面の2点です。
端正な描写とソフトなフォーカスは、下嶋さんの絵画の特徴ですが、その良さが表れた連作です。
入口横壁面の作品です。
他の作品に比べると、幾分対象から引いて描いた風景です。
地平線の緑。
何ともいえない、色合いと空間の美しさです。
同じように地平線を描いた2点です。
ミニマムな描写ですが、空間には広がりがあって、地と空のバランスと微妙な色使いに魅入ってしまいます。
NOSTALGHIA。
この言葉を辞書で引いても出てきません。
NOSTALGIAなら直ぐに出てきて、意味はノスタルジア、つまり郷愁です。
このHの入ったNOSTALGHIAは、タルコフスキーの映画のタイトル『ノスタルジア(NOSTALGHIA)』に由来します。
なぜHが入っているのか不明ですが、意味合いとしては同じようなものだと思います。
しかし、下嶋さんの絵画を見るのに、タルコフスキーの『ノスタルジア(NOSTALGHIA)』を知らなくても、いっこうに構いません。
それは下嶋さんがその映画にインスパイアされたということで、下嶋さんの絵画は、それ自体として独立しています。
ただし、キーワードとしての郷愁は意味があると思います。
人には共通の記憶というものがあります。
それは場所や時代が違っても、共通するものです。
その記憶の実体とは何でしょうか。
わたしは、光ではないかと思っています。
今ではない過去、此処ではない故郷を思う気持ち、それがノスタルジー、郷愁です。
記憶とは概ね映像ですが、それは具体的な何かであるより、光の在り方だと思います。
光の在り方が、いわば記憶の中心にあって、風景や人物よりも、記憶を記憶たらしめています。
それは、ある意味で、匂いに似ています。
ある種の匂いが強烈なノスタルジーを感じさせるように、光も、具体的な何かを浮かび上がらせる中心的な要素です。
下嶋さんの絵画は、光の絵画です。
それは、誰もが心の中に秘めている、光の記憶ではないかと思います。
生を受けて、世界に出でた瞬間、わたしたちは光の洗礼を受けます。
光を浴び、息をして、世界という風景と対面し、現れるのです。
それはNOSTALGHIAの中核として、わたしたちの記憶にしまわれています。
端正な、絵画です。
そして、大胆な絵画です。
そのバランスも、下嶋さんの絵画の妙です。
ご高覧よろしくお願い致します。
2008年藍画廊個展
2009年藍画廊個展
会期
2010年9月20日(月)-9月25日(土)
11:30am-7:00pm(最終日6:00pm)
会場案内