藍 画 廊


下嶋知子展
SAGESHIMA Tomoko


下嶋(さげしま)知子展の展示風景です。



各壁面の展示をご覧下さい。



入口から見て、左の壁面です。
左側の三点、共に「untitled」で作品サイズも各45.5×45.5cm、右は「sacrifices」で100.0×80.3cmです。



正面の壁面です。
「sacrifices」で、162.0×130.3cmです。



右側の壁面です。
左から、左端の作品は連作で「sacrifices」でサイズは各45.5×33.3cm、中央は「untitled」で145.5×112.0cm、右端の二点は共に「untitled」でサイズも各45.5×45.5cmです。



入口横の壁面です。
左から、「sacrifices」で100.0×80.3cm、右の二点は共に「untitled」で各22.7×22.7cmです。

以上の十二点が展示室の展示で、その他小展示室に二点、事務室壁面に一点の展示があります。
作品はすべてキャンバスに油彩です。



左壁面の組作品「untitled」です。
どこかの公園を描いたように見えます。
下嶋さんに訊ねると、近所にある公園の断片などを再構成したそうで、景色を写生したものではないそうです。
三点が繋がっているようで繋がっていないところも、興味深い作品です。



同じく左壁面の「sacrifices」です。
これも実際の景色を基に再構成された作品ですが、樹の配置の不可思議さが気になったそうです。
画面に点在する白と黒のドットが、光の存在を、一層効果的に表しています。



正面壁面の「sacrifices」です。
これも整備された公園や広場などを彷彿させる景色です。
具体的には竹林の景色が基になっているそうです。
シンメトリカルな構成ですが、主役はやはり光のように思えます。
筆の使い方が的確で、色が映えています。



右壁面の「untitled」です。
天地の比率がほぼ同じの、広々とした空間が美しく描かれています。
そらはほとんど同色ですが、木々と地面の濃淡が絶妙です。



同じく左壁面の「untitled」です。
展示室のほとんどは緑の世界ですが、この二点の黄がアクセントになっています。
強い光を感じさせる作品で、色同様に縦の二点展示という配置も、変化を与えています。



事務室の壁面に展示された「untitled」(40.9×40.5cm)です。
他の多くが広角的な視点で描かれているのに対して、これは標準的な画角で、対象(樹木)に近づいています。
左端中央に黒い小さなドットが一点描画されていて、絵の印象を支配しています。



小展示室に展示された、二点のテント(のようなもの)を描いた作品の一点です。
「untitled」(45.5×38.0cm)です。
この作品だけが極端に色合いが異なりますが、全体から浮いた感じはしません。
それは、他の作品が醸し出しているミステリアスな雰囲気と共通しているからです。



下島さんの絵画は、光の絵画です。
その圧倒的ともいえる光の存在は、前回の展示と同様です。
ほとんどが緑の絵画であることも、同様です。
絵画を支える技術も確かで、シンプルな構成なのに、見飽きることがありません。
空間と色の配置が、眼を惹きつけて離しません。
しかし全体の印象は前回と若干異なります。

下嶋さんが描写しているのは風景です。
しかしこの風景が自然であるかどうかは、分りません。
整備された緑の公園やゴルフ場は、自然の雰囲気を醸し出していますが、それを単純に自然と呼ぶことはできません。
却って、その人工性が目についてしまう場合もあります。

下嶋さんは、そのような風景を批評的に描いてるわけではありません。
自分が描きたいものを素直に描いています。
ただしその風景の(文字通り)不自然さには自覚的です。
自覚的だから、その奥にある何かが、絵から浮かび上がってきます。

光を真上から浴びた、端正な風景。
それは自然の猥雑さとは無縁の、整った風景です。
光は、猥雑であろうと整然であると、同じように降り注いでいます。

わたしが感じた、風景の奥にあるもの、それは何でしょうか。
実はわたしにもハッキリしないのですが、もしあえて形容すれば、神秘です。
如何様(いかよう)にも解釈できる神秘という言葉が、当てはまるような気がします。
奥に在って定かではないが、風景を支配しているもの。
それをとりあえずは、誤解を恐れず、神秘と名付けておきます。
その奥の深さを、神秘という言葉で表しておきたいと思います。

ご高覧よろしくお願いいたします。

2008年藍画廊個展



会期

2009年10月19日(月)-10月24日(土)

11:30am-7:00pm(最終日6:00pm)


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