石本かや乃展
ISHIMOTO Kayano
石本かや乃展の展示風景です。
画廊入口から見て、左側の壁面です。
左から、作品タイトル「7up」で、サイズ73(H)×60(W)cm、「99th ST」で116×91です。
正面の壁面です。
「23rd st」で89×117です。
右側の壁面です。
左から「KASUMI」で28×28、「WRS」で28×28、「Sep’08」で28×28、「az」で28×28です。
入口横の壁面です。
「Rink」で45.7×45.7です。
以上の8点が展示室の展示で、その他小展示室に2点、事務室壁面に1点の展示があります。
作品はすべてアクリルにキャンバスです。
左壁面の「7up」です。
本展の作品は石本さんが一年半のニューヨーク滞在で描かれてものです。
描かれた風景は、大きく分けるとマンハッタンなどの街並みと郊外の二つになります。
「7up」はマンハッタンのビル街ですが、鮮やかな色彩の対比に目が奪われます。
同じく左壁面の「99th ST」です。
題名から察すると、99丁目の風景のようです。
前回藍画廊の個展の描写法と今回は大きく異なり、空白がなく、色が画面全体を占めています。
左の突出した白いビルと右のグリーンのビル、前後の赤いビル群と全景の紺の建物。
色彩が風景を圧倒しています。
正面壁面の「23rd st」です。
この作品は上の2点と同じ色合いですが、空の空間が気持ち良く描かれています。
右壁面の2点、「KASUMI」と「az」です。
右壁面の4点は郊外の風景を描いた小品です。
風景の省略がマンハッタンのビル街とは若干異なった印象を受けますが、色彩の鮮やかさは同じです。
石本さんの作品、前述したように前回藍画廊個展とは大きく異なりました。
石本さんは住まいの近所の風景を描いてきました。
今回は外国のニューヨークですが、住居の近くという意味では同じです。
その点は同じですが、画面の空白がなくなり、色彩で埋め尽くされています。
あの空白は石本さんの絵画の特色だっただけに、この転換は相当な勇気を有したと思います。
その試みは、成功しています。
この鮮烈な色彩の対比と調和。
実際の風景のカタチを巧く利用して、自分の世界を表現しています。
風景はまず写真に撮られ、それを基に描かれていきます。
通常の風景画と大きく異なるのは、風景のカタチだけをトレースして、色彩は自由自在にペイントしていることです。
実際の色合いを無視して、好きなように色を塗っているのです。
その色の感性の豊かさにも感心しますが、それ以上に、この絵は通常の風景画とは同列に置けません。
それは何でしょう。
私見では、まず写真の構図が絵画に影響を及ぼしています。
風景の切り取り方が、一般的な写生とは違うのです。
(今回は視点が俯瞰ではなく、ごく自然な視点で風景を捉えたそうです。)
そして風景の省略方が、抽象の手前の際どいところで止まっています。
具象を残しながら、色とカタチを抽出しています。
そして、前回の空白の役割を、今回は空の存在が果たしていると思います。
昼の水色の青空と、夜の濃い紺。
この美しい色彩と空間が風景を支えています。
しかし、鮮やかです。
鮮やかな絵画です。
風景という形を借りた、石本さんの鮮やかな絵画です。
誰にも描けない、石本さんの色彩とカタチの世界です。
ご高覧よろしくお願い致します。