石本かや乃展の展示風景です。
入口から見て、正面と右側の壁面です。 左は、タイトル「ふつうのみち」で、サイズ2273×1818mm。 右は、「まえのいえ」で、1620×1300mmです。 |
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入口横右の壁面です。 「きおく」で、410×320mm(4枚組)です。 |
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左の壁面です。 「おつかい」で、1620×1303mm(2枚組)です。 |
画廊内の展示作品は以上の四点で、その他道路側ウィンドウに一点、芳名帳スペースに五点の展示があります。
作品はすべて綿布に油彩です。
展示作品を一点づつご覧いただきます。
左側壁面の「おつかい」。
二枚で一点になっている大作です。
地の下地がなく、綿布に直接油彩されています。
描かれているのは、石本さんの家の近所の風景です。
風景を写真に撮って、それを基に描かれています。
ペインティング(油彩)というよりは、ドローイング(線描)に近い描画です。
風景は、普段「おつかい」に行く商店街でしょうか。
正面の「ふつうのみち」です。
抽象画にも見えますが、地と図の構図が、やはり風景を想像させます。
それも、写真に撮られた風景のパースが感じられます。
右側壁面の「まえのいえ」です。 写真を基にしている構図の正確さと、ドローイングの自由な線と彩色が、独自の空間を作っています。 |
最後は入口横右の壁面の四枚組の作品です。
「きおく」です。
パノラマのような絵画ですが、(風景の)省略が上半分に偏っている為か、上の三点とは少し異なった印象を受けます。
画面の構成要素に、記憶=時間が入っている所為でしょうか。
通常風景を描くときには、まず構図を決めます。
風景の切り取りですね。
この切り取り方が、絵画と写真では微妙に違います。
石本さんの切り取り方は、写真のそれではないでしょうか。
画面から、レンズを通した風景の切り取り方を感じます。
切り取った風景の情報を、石本さんは大胆に省略していきます。
これは絵画的な手法です。
主観で、色を選択して、ドローしていきます。
そこにあるのは、一発勝負の緊張感です。
入念に準備された、視覚と身体の瞬間的表現です。
大きな作品には、身体全体の動きが表れています。
個人的に面白いと思うのは、写真的な切り取り方、遠近感に絵画とドローイングの要素が無理なく合体している点です。
そして、写真的を基にした風景に「私」が強く感じられることです。
ありふれた風景が、石本さん個人に私有されているような作品、です。
ご高覧よろしくお願いいたします。