入口横右壁面の二点です。
連作ではないと思いますが、同じような色相の二点です。
展示作品に共通するのは、天地を二分するラインがあることです。
そのライン上下で、空間の在り方が異っています。
葛生さんの作品は、絵画です。
今どき珍しいともいえる、本格な絵画です。
本格的な絵画に相応しく、真正面から絵を描いています。
逃げのない、力量のある絵画です。
葛生さんの作家歴を振り返ってみれば、当初からストレートな作風でした。
力を感じさせる、平面、絵画を描いていました。
小技というものがなく、キャンバスやパネルに正面から挑んでいました。
その姿勢は今でも変わりませんが、表現に、潤いや繊細さを感じさせるようになってきました。
それは力を殺ぐことではなく、力そのものの質を変えているように思えます。
絵画とは、突き詰めていえば、色彩と形(構図)になります。
たったそれだけですが、色は無限ですし、形も無限です。
当然、その組合せも無限です。
その中で、作家は苦しみながら、唯一を模索します。
絵画の主流がストレートではなく、変化球になったのは前世紀の終り頃です。
それは時代というものの所為で、善し悪しの問題ではありません。
そういう変遷がなかったとしたら、現代美術は死に絶えていたでしょう。
葛生さんの絵画は本格で、ストレートです。
しかし、時代遅れではありません。
時代の只中ではありませんが、時代というものを確実に見据えています。
そのような絵画が存在し続けなければ、これも又、現代美術は死に絶えてしまうでしょう。
ご高覧よろしくお願いいたします。
2000年藍画廊個展
2001年藍画廊個展