長坂真帆展の展示風景です。
画廊入口から見て、正面と右側の壁面です。
左の二点は、作品サイズ900(H)×1800(W)mm、
右は、570×755mmです。
入口横右の壁面です。
三点共に、210×298mmです。
左の壁面です。
作品サイズ1100×1500mmです。
画廊内の展示は以上の七点で、その他道路側ウィンドウに一点の展示があります。
作品は、パネルに綿布、染料を使用しています。
左壁面の作品です。
海の波のようにも見えるし、空の雲海にも見えます。
長坂さんに尋ねたところ、モチーフとしては具体的な風景があるそうですが、それに囚われず描いていくそうです。
かといって、抽象でもなく、その中間を目指しているそうです。
変化し続ける空間の、空間の有り様(動きや色彩)が描かれているのではないでしょうか。
本展の展示で最も印象的なのは、正面壁面の二段掛けです。
左右に少しずらして、上下に同じサイズの作品が展示されています。
作品内部の動きと呼応している展示で、感心しました。
上の画像は、上下の下の作品です。
遥か上空から見下ろした雲の様子と山の連なり。
あるいは、大洋の波の調べ。
いろいろな想像ができますが、画面にあるのは、自然界の弛まない移り変わりです。
一時も止まらない、変化の流れです。
右壁面の作品です。
前回個展も一見すると同じような作品ですが、使用画材に大きな違いがあります。
アクリル絵具から染料に変わりました。
塗るのではなく染み込ませる描法が一段と際立っています。
近づいて見ると、綿布に染料が染み込んでいる様子がとても美しい。
人為を排したような自然さが、そこにあります。
入口横右壁面の三点です。
染料が染み込んで、絵が形作られている様が、お分かりでしょうか。
三様の空間が、細やかで透明感のある描画で表現されています。
布に染み込む絵具。
長坂さんが固執している絵画の方法です。
染料が綿布に触れたとき、(恐らく)そこに境目はなくなります。
染料と布が一体化し、色と形が表れます。
原初のモチーフである風景にも、同じことがいえます。
雲と空は、別のようでありながら、その境目は曖昧です。
雲は空は一体化しながら、止まることなく形と色彩を変化させています。
海と空も、ハッキリとした境があるようで、実はありません。
海の表面の水は、常に蒸発していて、空(空気)と同化しています。
波は繰り返しますが、同じ形や色は二度とありません。
(波と波でない部分の境目も、ありません。)
長坂さんは、(わたしの想像ですが)こうした運動や空間を美しいと思っています。
そうでなければ、このような絵画を描くことはないでしょう。
では、なぜ美しいと思っているか。
これも想像ですが、空間には変化と安定が矛盾なく存在しているからです。
変化し続け、止まることがないのに(から)安定している。
その状態を美しいと思う。
片方、(又しても想像ですが)描かないことを理想とした描き方をしています。
塗るのではなく、染み込ませる。
その自然ともいえる作用に、少しだけ手を貸す。
その考えの基にあるのは、空間や運動に干渉することなく溶け込もうとする意志です。
安定した運動の空間の流れに、自身を染み込ませる。
それが、長坂さんにとって、絵を描くということの意味だと思います。
ご高覧よろしくお願いいたします。
2003年藍画廊個展
2004年藍画廊個展