藍 画 廊



久保崎麦展
KUBOSAKI Mugi


久保崎麦展の展示風景です。
画廊入口から見て、正面と右側の壁面です。



左から、作品タイトル「
恐竜」で、サイズは9×12cm、エッチングとアクアチント、
「浮漂」で、10×19.5cm、エッチングとアクアチント、
「起源」で、9×12cm、エッチング、
「船出」で、15×18cm、エッチングです。



入口横右の壁面です。
左から、「夢の跡II」で、9×12cm、エッチング、
「けむり」で、16.7×22.5cm、エッチングです。



左側の壁面です。
左から、「遠い森II 」で、9×12cm、エッチング、
「二つの結末」で、9×12cmが2点、エッチングとアクアチント、
「嵐の後」で、9×12cm、エッチングです。

以上の九点が画廊内の展示で、その他道路側ウィンドウに一点、芳名帳スペースに二点の展示があります。
作品を何点かピックアップしてご覧いただきます。



左側壁面の
「二つの結末」です。
組になった作品ですが、中央を境に鏡のような景色になっています。
右が昼(光)だとすると、左は夜(闇)。
左をよく見ると、線路は途中で墜ちています。
嵐の後の、月夜なのでしょうか。
トンネルという、非日常的空間を抜けた後の、二つの結末(エンディング)。
その対比が、ドラマを想像させる作品です。



正面壁面の
「浮漂」です。
水面に浮かぶ葉と、水中の水草。
左下には小さな帆船の進む様子が。
箱庭的世界ですが、少年の夢想は大海に遊んでいるに違いありません。
水の描写が美しい作品です。


同じく正面壁面の「起源」です。
起源=ルーツ=根を表していますが、精緻な描写のエッチングです。


入口横右壁面の「夢の跡II」です。




廃坑の線路と放置されたトロッコ。
往時は栄えた炭坑の跡ですが、静寂と陽の光が、逆に夢の輝きを想像させます。
ここそこに生えている雑草や蔦も、堆積された時間を物語っています。

久保崎さんの作品は銅版画です。
銅版画は、制約のある表現(ほとんどがモノクローム)ですが、それを逆手にとった寓話や反日常的世界を生んでいます。
久保崎さんの作品で特徴的なのは、旅(陸上、海上、空上)や時間をモチーフに、日常と非日常がメビウスの輪のように繋がっていることです。

例えば、上の「夢の跡II」。
右の上にトンネルが見えます。
そのトンネルは坑道として、地下の採掘場に繋がっているはずですが、分かりません。

久保崎さんの世界では、海に出てしまうかもしれない。
輝く海か、それとも静まり返った夜の海か。
それも、分からない。
久保崎さんの、夢想次第です。

一般に夢想とは、現実逃避的な思いを意味しますが、現実に食い込む夢想もあります。
ある意味で、ルーチンと化した現実、日常よりも、リアルな感覚を与える夢想です。
説得力のある、夢想ですね。
それが奇想天外であっても、見る人にリアルを覚えさせる。

その為には、表現技術がまず必要です。
そして、その表現形式が夢想と合致しているかどうか。
これも必要です。
それを土台として、想像力(夢想)を羽ばたかせる。

想像力(夢想)の基は、観察力です。
つまり、日常をしっかり見ていなければ、素敵な非日常は出現しないのです。
「起源」のような作品が作れなければ、夢想は現実に負けてしまうのです。


ご高覧よろしくお願いいたします。

2003年藍画廊個展
2004年藍画廊個展



会期

2007年6月4日(月)-6月9日(土)

11:30am-7:00pm(最終日6:00pm)


会場案内