三輪美奈子展の展示風景です。
画廊入口から見て、正面と右側の壁面方向です。 壁面には四点の水彩の平面、床には箱のような立体と、それに覆いかぶさる布。 天井からは、折れ曲がった太い縄のようなものが吊り下げられています。 |
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入口横右の壁面です。 壁に設置されたのは、FRPや粘土で形を整え、それを布で覆った立体です。 布には水性ペンキが部分的にペイントされています。 (上の箱の上の布も同様です。) |
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左側の壁面方向です。 正面にはキャンバスにアクリルの平面。 両側の狭い壁面には、それぞれ縄のような立体と水彩の平面が一点展示されています。 |
画廊内の展示作品は合計十二点で、その他道路側ウィンドウに五点、芳名帳スペースに二点の展示があります。
まず作品の構造についてご案内したいと思います。
壁面に展示された紙の平面は、手漉の韓紙に水彩を使用しています。
韓紙は、日本の紙が和紙と呼ばれるように、韓国の紙のことを指します。
画廊の床にド〜ンと置かれた箱は、発泡スチロールをアクリル板で補強したものです。
木製のカッチリした質感を嫌い、面や角に適度な軟らかさを求めたものです。
上の布は、綿で織り目の荒い、比較的薄い素材を使用してます。
天井から吊るされた太い縄のようなものは、芯が針金で、その周りを綿で包み、綿布で包帯のように覆ったものです。
触れると、大きく動きます。
壁面に展示された縄も同じ構造です。
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本展は一つ一つの作品が絡み合って、画廊内に一つの空間が形成されています。
作品を観賞するポイントは無数に存在します。
その中から任意に選んだ場所の撮影画像五点ご覧いただきます。
上は、正面壁面から見た左壁面の展示です。
下は、左壁面の二点です。
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入口横右壁面の立体作品に近づいて撮影した画像です。
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上は壁面に展示された縄のような作品のアップです。
下は、視点を下げて見た床の立体と平面です。
(布の下から紙がのぞいているのがお分かりでしょうか。布の盛り上がった形は紙で作られています。)
個々の作品には「flower」という共通タイトルが付けられていますが、予備知識なしでは、花には見えないかもしれません。
いわれてみれば、なるほど花の様々な姿が浮かんできます。
縄のようなものは、茎やツルを現しているかもしれません。
画廊空間の中心になるのは、床の箱です。
しかし秩序らしい秩序があるのはそこまでで、後は勝手に作品同士が交感している風情です。
それは秩序というより、複雑に絡んだ小宇宙の有様です。
展示のキーになるのは、やはり天井から吊るされた縄のようなものです。
観賞者に絡みついて、触れるとダンスのような軌跡を示します。
わたしが、空間全体で感じたのは「生命」です。
それは「flower」でも良いし、「人間」のそれでも構いません。
「生命」の大らかな交感が、三輪さんの感性で展開されています。
三輪さん自身も大らかな性格の方ですが、作品も負けず劣らず大らか。
気取りや小細工のない、ストレートで迷いのない表現が伝わってきます。
しかも、積み重ねた技術が作品を確かなものにしています。
一言付け加えれば、作品空間には怖さも感じました。
映画「エイリアン4」の凄まじい母性愛を見た時のような、怖さです。
それは多分、わたしが男で、「生命」の連鎖とは直接的な縁がないからだと思います。
「生命」は大らかですが、恐れを呼び起こすほどのダイナミズムも、同時にあるのではないでしょうか。
ご高覧よろしくお願いいたします。
藍画廊2002年個展
藍画廊2003年個展