土居隆範展、画廊入口から見て左側壁面の作品です。
風景画、ですね。
風景画ですが、縦の白い帯が鑑賞の邪魔をしているように見えます。
川をモノクロームに近い色調で描いた風景の奥行きが、白い帯のところで画面の表面に引き戻されます。
奥行きは人間の眼が作りだした虚で、表面との間に架空の距離を創出します。
土居さんが個展のシリーズでテーマにしているのは、その距離です。
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上の作品の拡大した部分です。 画面を横切る等間隔の細い線は、表面に張られた糸です。 白い帯は、白い帯以外の部分をマスキングしてペイントされています。 表面を強調する領域です。 画面を注意してみると、微かに中央に四角に区切られた部分があります。 この部分は描画ではなく、デジタルプリントです。 今回の展示の新しい試みです。 |
全体の展示風景を壁面ごとにご案内いたします。
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画廊入口から見て、正面と右側の壁面です。 左は、タイトル「Position of S 0401」で、サイズは72.7×51.5×2.4cm。 中央は、「Position of S 0406」で、 102.9×72.7×3.1cm、 右は、「Position of S 0402」で、 103×72.7×3.1cmです。 |
入口横右の壁面です。 (左の作品は上の画像の右側の作品です。) 「Position of S 0405」で、 51.4×72.7×2.4cmです。 |
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左側の壁面です。 最初にご覧いただいた作品です。 「Position of S 0404」で、 72.7×102.9×3.1cmです。 作品サイズの表記は、 (H)×(W)×(D)cmの順になります。 |
画廊内の展示は以上の五点で、その他道路側ウィンドウに一点の展示があります。
作品はすべて、合板に油彩、デジタルプリント、糸、接着剤を使用しています。
正面壁面の右側の作品です。
白い帯の他、赤い帯も縦にペイントされています。
中央の島のような部分がデジタルプリントです。
実際は島ではなくて、川の岸の画像をデジタル処理で反転させ、正像と鏡像を対称に繋げたものです。
像をさらに虚像にしたような、複雑な処理です。
入口横右壁面の、上と同じ風景が描かれた作品です。
(風景は二点づつ同じになっています。)
この作品には横に断続的な黄色の帯がペイントされています。
人間の眼は、平面に描かれた風景に奥行きを見ます。
視覚のメカニズムを利用した遠近法が、そのような虚としての奥行きを創出します。
一方で人間は、その風景が板に描かれた奥行きのないものであることも知っています。
これは、観念の操作なのでしょう。
しかしこの観念の操作が、絵画の原初からあったとは限りません。
あったものとして、歴史的絵画を見るのは誤りです。
土居さんの提示している、虚としての距離(奥行きと表面の距離)がいつから出てきたのか。
その背景にはどのような認識があったのか。
そんなことを考えながら、わたしは作品を拝見しました。
ご高覧よろしくお願いいたします。
2001年藍画廊個展
2002年藍画廊個展
2003年藍画廊個展