多田布美子展の展示風景です。
画廊入口から見て、正面と右側の壁面です。 左は、 タイトル「step into a fog」で、 作品サイズは1560×1820mm。 右は、 「微かに放つ」で、 670×540mm。 |
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入口横右の壁面です。 |
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入口左側の壁面です。 「小径」で、 1482×1150mm。 この他、道路側ウィンドウに一点、入口芳名帳スペースに三点の小品が展示されています。 |
作品はすべて、綿布/テトロンにアクリル絵具を使用しています。
多田さんの平面の特色は、画面が二層になっていることです。
下の層は綿布にアクリル絵具、上の層はテトロンにアクリル絵具で描いています。
上のテトロンはほぼ透明ですから、鑑賞者は二つの層が重なった画面を観ていることになります。
それでは、展示作品を数点ご覧いただきましょう。
左側壁面の「小径」です。
小径を描いた風景画のようにも見えますが、特定のモチーフはないそうです。
前回、前々回の個展と比べると、色が沈静化し、一つ一つの形が大きくなっています。
作家の多田さんと正面の作品「step into a fog」です。
かなり大きな作品であることが分ります。
(余計なことですが、派手な可愛いコートが良くお似合いですね。)
この作品部分をご覧いただきます。
「step into a fog」を訳すと、「霧の中に入る」になります。
このタイトルも、(想像ですが)後で付けられたものではないかと思います。
確かに霧の中に入ったような風景ですが、この作品にはそういった具体性を超えた色と形の表現力があります。
色と形の出現を垣間見させるような、表現力です。
最後は、右側の壁面の「微かに放つ」です。 今回の展示作品の色調は青、緑、紫が基調になっています。 前回までの赤系の色調が影を潜めた中で、この作品の黄色は効果的な使われ方をしています。 全体の展示のアクセントにもなっています。 |
多田さんの作品は二層を持つ絵画ですが、表現の必然性がその特殊な技法の是非を凌駕した感があります。
言葉を換えると、表現されたモノの成熟度が方法の特殊性に打ち勝ったということです。
この壁を破るのは、想像以上に難儀だったと思います。
ここから又、次の一歩が始まります。
色や形は光によって認識されます。
認識される直前の状態、つまり色や形が未分化で曖昧模糊としている状態とは何でしょうか。
あるいは、人がそれらを認識する意味とは何でしょうか。
動物や植物は色や形をどのように認識しているのでしょうか。
光の正体とは世界の正体であり、世界とは斯(かく)も美しいものなのかもしれません。
ご高覧よろしくお願いいたします。
2002年藍画廊個展