正面の作品の全景です。
上の透明なテトロンに描かれた絵と下の綿布の絵が重なっています。
このページは液晶画面でモニターしながら作成していますが、重なりが立体的に見えて不思議な感じです。
ご覧になっている方のモニターではどう見えるでしょうか。
展示作品の中心にあるのは光です。
喩えてみれば、雨上がりの早朝の眩(まばゆ)い光です。
すべてが洗い流され、事物が本来の色を取り戻し、光を吸収して清涼に輝いています。
光は、生きとし生けるものに降り注いでいます。
あるいは、遠い記憶を遡れば想いだされるかもしれない、初めて見た光。
目が明いて、ぼんやりと認識される光の世界。
外界は形を成さず、色の重なりだけが網膜に映し出されます。
生れてきた人間を祝福するかのような、光のシャワーです。
これらの喩えは、多田さんの絵画を観たわたしの勝手な感想です。
当然、観る人によって光の感じ方は違ってきます。
画廊で直接ご覧いただければ、と思います。
特殊な技法で描かれた絵画ですが、その特殊性は表現の必然性に収斂されています。
観る者は特殊性に惑わされることなく、作品の内実に向かうことが出来ます。
そこにあるのは、作品そのものの成長です。
ご高覧よろしくお願いいたします。