「世界」2010 浜田涼展(2)
HAMADA Ryo



「世界」2010 浜田涼展(1)の続き



作品は写真をアクリルマウントして、その表面に加工が施されています。
写真はご覧の通りピンボケ写真で、カメラでピントのボケ具合を調整しています。

展示室の作品はいつも通りの、アクリルマウントした浜田さん流の展示ですが、大きく異なるのが小展示室と事務室壁面の展示です。
藍画廊は入口から入って右側に小展示室と(右側壁面の裏側に)事務室があります。
細長い部屋のような形で、小展示室と事務室が並んでいます。
そこの展示をご覧下さい。



小展示室の展示です。
壁面全面に写真が貼られています。
次に反対側の事務室をご覧下さい。



こちらも全面に写真が貼られています。



展示の部分です。
小展示室と事務室の壁面で、事務仕事に差し支えない壁面には、すべて写真が貼ってあります。
その中から写真を選択し、アクリルマウントして表面加工を施したのが、展示室の作品です。
言ってみれば、作家のアトリエ(スタジオ)が小展示室と事務室壁面で、それを含めて公開したのが今回の展示です。



今貴方がコンパクトデジカメを持っているとしましょう。
そして浜田さんのようなピンボケ写真を撮ろうと試みたとします。
そこで、貴方はハタと困ってしまうはずです。
貴方はカメラはいつもオートで撮るか、カメラが予め用意したシーン機能で撮っています。
それで、特に失敗はありません。
時々手振れで画面がボケる時がありますが、浜田さんのようにキレイにボケません。
さて、困りましたね。

コンパクトデジカメにも、マニュアル(手動)でピントを合わせる機種があります。
その機種であるならば、ピントをオートフォーカスからマニュアルに切り替えます。
そして適当にボカして、シャッターを切れば、浜田さんのようなボケた写真が撮れます。

つまり、浜田さんの撮影方法はカメラメーカーの想定外の撮り方です。
一眼レフには、ピントをオートよりも正確に合わせたい人の為に、マニュアル機構のピント合わせが付いています。
決してピンボケ写真を撮る為にマニュアルが付いているわけではありません。

マニュアルでピントを外せば、浜田さんのようなピンボケ写真は撮れますが、同じものは撮れません。
なぜなら、浜田さんはカメラで絵を描いているからです。
紙と絵具があっても(誰でも)同じ絵が描けわけではありません。
それと同じように、浜田さんのような絵は、誰にも描けません。

ピンボケ写真は、一見みな同じように見えますが、それは大きな勘違いです。
それが証拠に、この浜田さんの作品のような美しいピンボケ写真を撮影することは至難の技です。
作品を(できれば画廊で)じっくりとご覧下さい。
その色と形と構図の美しさは偶然ではありません。
綿密な計算と経験によって、息を呑むような、美しい絵を生んでいます。
そしてその美しさのヴァリエーションにも驚きます。

写真が発明された時、多くの画家が失業しました。
絵の記録としての価値が失墜したからです。
それから画家は、絵画独自の在り方を追求し始めました。
色を、形を、そして光を追求していきました。

浜田さんの作品は、近代絵画の正統な後継かもしれません。
神なき後の近代絵画の大きなテーマは、光でした。
浜田さんの作品で最も感じるのも、光です。
画面の中に光があって、空気の層が存在します。

しかし皮肉なことに、その光は、絵画に独自性を迫った写真から生まれています。
しかも想定外の撮影方法によって為されています。
このメビウスの輪のような関係は、とても面白いし、浜田さんの作品世界の秘密かもしれません。

整然と展示された展示室の作品。
それとは対照的に乱雑(?)に貼られた小展示室や事務室壁面の作品。
この対比も、無難でオシャレな展示を嫌う冒険心があって、面白いと思います。
通常の平面展示ともインスタレーションとも違う、新たな試みです。

ご高覧よろしくお願いいたします。

「世界」2010 浜田涼展/テキスト
浜田涼藍画廊2001年個展
浜田涼藍画廊2002年個展
浜田涼藍画廊2003年個展
浜田涼藍画廊2004年個展
浜田涼藍画廊2006年個展
浜田涼藍画廊2007年個展
浜田涼藍画廊2009年個展

作家Webサイト

iGallery企画 「世界」2010
浜田涼展
HAMADA Ryo

2010年2月15日(月)-2月27日(土)
21日(日)休廊
11:30ー7:00pm(最終日-6:00pm)

制作協力 株式会社 カシマ


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