往復書簡vol.3
切れ切れの愛

横野奈々×髙柳あおい展
YOKONO Nana/TAKAYANAGI Aoi


往復書簡vol.3 ー切れ切れの愛ー横野奈々×高柳あおい展
の展示風景です。



本展は造形大学近藤昌美教授の企画による往復書簡vol.3で、横野奈々さんと柳あおいさんの「切れ切れの愛」と題された二人展です。
展示室に7点(横野2点、柳4点)、小展示室に6点(横野2点、柳4点)の展示があります。
最初に近藤昌美教授のコメントを転載いたします。


私が企画する「往復書簡」展も今回で3 回目となる。
この企画は、大元は若い卒業生画家と在校生に往復書簡つまり文通を展覧会までの期間に試みてもらいながら、それぞれの制作に対しての思考やその背景などを語り合いつつ展覧会を2人で築き上げて欲しいという思惑であった。
これは大学教員として大学内での教育と学外での作品発表といういわゆる展示発表の現場とを繋ぎながら、さらに制作プロセスを展示者同士で共有し、またそれを観者にも広げていけないかという教育研究の一環でもある。
しかし今回は卒業生ではなく他学から本学大学院へ進学して来た大学院生と学部生との2人に参加依頼をした。
2人は本企画で初めて出会い、作品も人間も未知な同士が往復書簡を通して展覧会のための様々な準備も協働しながら作品論も交わして来た。
本展は教育プロセス面を強めた企画ではあるが、それと展覧会の成否は別とは言え2人の才能のさらなる開花の一助にはなっているかとは思う。
皆様には是非のご高覧の上、厳しいご批評またご助言をいただければ大変ありがたいことです。

東京造形大学絵画専攻領域教授  近藤昌美

各壁面の展示です。



画廊入口から見て、左側の壁面です。
柳あおいさんの展示です。



正面の壁面です。
横野奈々さんの展示です。



右側の壁面です。
左が横野奈々さん、右が柳あおいさんの展示です。



入口横の壁面です。
横野奈々さんの展示です。
作品の詳細です。



左壁面、左端の作品です。
柳あおいさんのタイトル「Flower No.1」です。
柳さんの作品はすべてキャンバスに油彩で、サイズは1303×1620mmです。



左壁面、中央、右端の作品です。
柳あおいさんの作品で、「Flower No.2」、「Flower No.3」です。



正面壁面の作品です。
横野奈々さんの作品で、「君は私を見ていたよね、私も君を見ていたよ」(何も塗っていない綿布に鉛筆)で1818×2273mmです。



右壁面、左端、右端の作品です。
左は横野奈々さんの作品で、「チューリップの球根がどんなものだったか、まだ覚えてる」(何も塗っていない綿布に鉛筆、色鉛筆、木炭、パステル)で1303×1620mm 、
右は柳あおいさんの作品で、「Flower No.4」です。



入口横壁面の作品です。
横野奈々さんの作品で、「ここは僕の放課後から何歩進んだ場所なのだろう」(何も塗っていない綿布に鉛筆、色鉛筆、木炭、パステル)で1620×1303mmです。


往復書簡は2人の作家がメールをやり取りしながら、展覧会に向けて作品を制作する企画です。
今までは造形大学の卒業生と在校生の交わりでしたが、今回は院生と学部生になります。
この企画の面白いところは、二人展を先輩と後輩で行うことです。
それもさほど年齢差のない二人の、真摯に制作に向かう姿勢がメールの文面に表れていて、自身と美術についての語り合いにもなっています。
意外に今までにない二人展かもしれません。
書簡の文面はプリントされ画廊で配布していますので、興味のある方は是非ご覧になって下さい。

書簡を読むと、最終的に共通のテーマとして「痛み」を見出しています。
「痛み」とは主に他人の痛みを共有すること、その難しさを表しています。
横野さんは、肉体労働者にフォーカスして、その日常をモノクロームで切り取っています。
それが生まれるスタートとなった格闘技家のポートレイトも展示されています。
柳さんは自身の痛みの(一週間の鼻血)経験を基にして、植物と人の顔で痛みの共有を目指しています。

人の痛みを分かち合う。
言うのは簡単ですが、なかなか難しいことです。
しかしそれは社会、それもわたしたちが今生きている近代社会にとっては必要かつ欠かすことのできないことです。
端的に言葉でそれを表せば、外来語の愛(Love)になります。
展覧会のタイトルも「切れ切れの愛」、ストライクのタイトルですね。

「痛み」にはメンタル(内面)とフィジカル(肉体)があります。
本展でテーマにしているのは主に後者です。
この着目点と表現の方法は注目に値します。
つまり精神が上位にあって、肉体がスポイル(疎外)されている社会に実相を見ているからです。
その方法として、絵画を用いていることも重要です。
今の美術にとって絵画とは何かが問われているからです。
以上のようなわたしの個人的な想いから作品を見ていると、若い作家の、日常生活に根ざした新鮮な表現が見えてきます。

ご高覧よろしくお願いします。

プライスリスト

2018年往復書簡 Vol.2
2017年往復書簡

会期
2020年8月31
日(月)ー9月5日(土)
11:30amー7:00pm(最終日6:00pm)

会場案内