藍画廊

往復書簡 Vol.2
ー森からでかけるー
Correspondence letter

東京造形大学 佐とう理恵 SATO Rie 松下貴根
MATSUSHITA Takane


昨年スタートさせた新企画「往復書簡」とは現役学生と既に卒業してアーティストとして活躍を始めている先輩画家との「文通」を通して交流を図り2人展に繋げていくというものだ。
初めて顔を合わせた2人はそれぞれキャリアも異なるわけだが、
その文通は1つの展覧会に向けてそれぞれの制作を支える考え方やさらに生活面での苦労や工夫まで踏み込んだ内容になる可能性もある。
卒業生は社会にいち早く出た先輩画家として、また学生は純粋に制作をする者として互いに何がしかの影響を与えあってくれたら展覧会企画の意図も少しはあるのではないだろうか。

東京造形大学絵画専攻教授 近藤昌美

往復書簡ー森からでかけるーの展示風景です。



往復書簡ー森からでかけるーは松下貴根さんと佐とう理恵さんの二人展です。
松下さんは画廊入口から見て左側と正面の壁面、佐とうさんは右側と入口横の壁面の展示です。



左壁面、松下さんの展示です。



正面壁面、松下さんの展示です。



右側壁面、佐とうさんの展示です。



入口横壁面、佐とうさんの展示です。

以上の9点が展示室の展示で、その他小展示室に3点の展示があります。
作品の詳細をご覧下さい。
まずは松下さんの作品(すべてカンヴァスに油彩)です。



左壁面、タイトル「森林浴」(連作)左側の作品です。



左壁面、「森林浴」(連作)右側の作品です。



「森林浴」(連作)のピックアップ(2点)です。



正面壁面、左端、右端の作品です。
左は「この向こうへ」でサイズ727×910mm、
右は「夏休み」で1455×1120mmです。



続いて佐とうさんの作品(すべてパネルにアクリル絵具)です。
右壁面、左端、左から2番目の作品です。
左は「女性ドライバー 2」で606×500mm、
右は「女性ドライバー 1」で606×500mmです。



右壁面、左から3番目の作品です。
「女性ドライバー 5」で1167×910mmです。



右壁面、左から4番目、右端の作品です。
左は「女性ドライバー 3」で606×500mm、
右は「女性ドライバー 4」で606×500mmです。



入口横壁面の作品です。
「湖畔」で760×1220mmです。

本展のサブタイトルはー森からでかけるーです。
このタイトルは佐とうさんと松下さんが「文通」の中で合意を得て決めたものです。
その経緯はギャラリーで配布された「文通」の全文テキストで見ることができます。
それとは別に、わたしが個人的にそのタイトルから想起したことを少し書いてみます。

森とは、そこに存在するものすべてが緊密に連鎖しあった一つの宇宙です。
そこで人間は自然環境の一部として、その自給自足の生活を通じて、実存を見つめることが可能になります。
それはアマゾンの狩猟採集生活を送る未開部族の記録やH・D・ソロー『森の生活』に詳しい。
人類の多くは文明という利便に囚われ、わたしたちはその最進化版である西欧近代文明の果てにあります。

松下さんの作品は、森の風景を描くことを通じて、その多彩で多様な有様を示しています。
佐とうさんの作品は、文明化の中で疎外されていた女性の社会進出を、女性ドライバーで表現しています。
二人に共通するのは、自分を見つめるという視点、視線です。
自分とはなにか、社会と自分との関係は。
そのような問いを含めて、自分の在り方と方向が絵画の形式で表されています。

佐とうさんも松下さんも具象的な絵画で、確かな技術の持ち主です。
ただし、そのフォルムは対照的で、思い切った省略の佐とうさんと精緻な松下さん。
テーマ同様、これも今の絵画の動向を表していて、興味深い展示です。

ご高覧よろしくお願い致します。

プライスリスト1
プライスリスト2

2018年往復書簡

会期

2019年8月19日(月)ー24日(土)
11:30amー7:00pm(最終日6:00pm)

会場案内