藍 画 廊

 

往復書簡
Correspondence letter

井上稚菜 INOUE Wakana 新海帆南
SHINKAI Honami


藍画廊での企画展1回目は2011年にさかのぼる。  
第1回目は武蔵美女子美の教員と推薦する各校1名の3人の学生作品に教員も小品を展示するという企画だった。
'12卒からは'16年までの5年間は慶庶義塾大学美學美術史の教員方と組み、事前のプレゼン交流を経て両校学生による批評と作品による学生交流展を展開して来た。  
また昨年は名古屋芸大との学生交流2人展と今までは2校ないし3校の学生同士の交流、その結果の展示という形で進めて来たが、今年はそれら他学との交流事業はー段落させて新企画「往復書簡/Correspondence letters」をスタートさせることにした。  
「往復書簡/Correspondence letters」とは制作を続けているが発表歴の浅い卒業生作家と在校生、つまり本学の先輩と後輩の間で制作についての文通を会期まで続けた上で2人展を開催するというのが要旨。
私白身、美大教員として作家志望の卒業生をどうフォローしていくかはなかなか明確になっておらず、今回の企画はそうした意義も含めた教育研究でもある。  
また往復書簡・文通では作品の話ばかりではなく生活の維持やアトリエ取得の実際など先輩から後輩へ伝わることも多いのではないかと期待する。
大学のカリキュラムからだけでは得られない教育効果が得られ、また2人にとって実質的なデヴュー展として彼らにも貴重な体験となり、さらに初見の観者の皆様にも質の高い新人の作品を紹介出来ることになれば多重の意義があるのではないか。  
その意味でも「往復書簡/Correspondence letters vol.1」の本展に参加する2人にはそのキックスタートとして大いに期待したいし、重ねて皆様のご高覧をお待ちしております。                          

東京造形大学絵画専攻教授  近藤昌美

往復書簡展の展示風景です。



各壁面の展示をご覧ください。



画廊入口から見て、左側の壁面です。
新海帆南さんの作品です。



正面の壁面です。
新海帆南さんの作品です。



右側の壁面です。
井上稚菜さんの作品です。



入口横の壁面です。
井上稚菜さんの作品です。

以上の12点が展示室の展示で、その他小展示室に3点、事務室壁面に1点の展示があります。
展示の詳細をご覧ください。



左壁面、左端と右端の作品です。
左はタイトル「風と向こう」(綿布・油彩)でサイズ1200×1200mm(S50)です。
右は「小さなこと」(綿布・油彩)で910×727mm(F30)です。



左壁面、中央の作品です。
「untitled」(綿布・油彩)で455×455mm(S8)です。
テーブル上はドローンイング各種です。



正面壁面、左端と右端の作品です。
左は「しろいひかり」(綿布・油彩)で直径 900mm(S30)です。
右は「海とみさき」(綿布・油彩)で1303×970mm(F60)です。

以上は新海帆南さんの作品です。



右側壁面、左端と中央の作品です。
左は「可愛い女の子」(カンヴァス・油彩)で600×500mm(F12)です。
右は「色気は寄せ付ける」(カンヴァス・油彩)で460×42mm5(F10)です。



右壁面、右端と壁面前の作品です。
左は「ものの重さ」(カンヴァス・油彩)で1455×1120mm(F80)です。
右は「愛の証」(木・アクリル)で600×500×500mmです。



入口横壁面、左端と右端の作品です。
左は「色気は寄せ付ける」(カンヴァス・油彩)で530×33mm0(M10)です。
右は「ラスクより愛の方が軽い」(カンヴァス・油彩)で910×1167mm(F50)です。

以上は井上稚菜さんの作品です。

 

本展は二人展で、造形大学美術学科絵画専攻卒業生と在学生の絵画作品の展示です。
卒業生は井上稚菜さん、在校生は新海帆南さんです。
井上さんは3年前の卒業で数回の発表経験があり、新海さんは校外での発表は初めてです。
指導教官(近藤昌美さん)の企画で、先輩と後輩がメールで文通をしながら作品を制作するユニークな形式を採っています。

井上さんと新海さんの絵画、対照的な外観の絵画です。
井上さんは鮮やかな色彩でシンプルで大胆なタッチ、新海さんは抑えた色彩に複雑に絡みつくような筆使い。
モチーフも井上さんは社会的なテーマで、新海さんは自然の景色。
しかし二人の絵画には相通じるものがあります。

この展覧会のサブタイトルは「見えないけれど 見える景色」です。
井上さんは社会の人間の間にある関係を鋭く、幾分ユーモラスに捉えています。
これは見えない関係を、絵画という視覚表現で顕在化したものです。
新海さんの絵画は森や海の景色に、自身の内面を探ったものです。
これも、見えないものを絵具と支持体を使って視覚化したものです。

見えないものを描くことは、絵画が絵画として存在する大きな価値です。
そのような意味で、二人の絵画は正統な系譜の上にあります。
企画した近藤さんの意図もそこにあったと想像しますが、それに応えた二人の絵画も興味深い作品になっています。
付け加えて、井上さんの木彫や新海さんの多様な素材を使用したドローイングなど、枠に収まらない今日的な絵画の在り方を示しているのも注目点です。

ご高覧よろしくお願い致します。

プライスリスト1
プライスリスト2

2018年8月20日(月)ー25日(土)
11:30amー7:00pm(最終日6:00pm)


会場案内