藍 画 廊



新世代への視点2013
高橋美羽展 - それから -
TAKAHASHI Miwa


東京現代美術画廊会議(銀座、京橋地区の10の画廊を中心に発足し、現在は12の画廊)は、1993年より「-画廊からの発言- 新世代への視点」を主催してまいりました。
14回目の開催となる2013年展の藍画廊の展示は、高橋美羽さんの平面作品です。



各壁面ごとの展示をご覧下さい。



画廊入口から見て、左側の壁面です。
上段左から、タイトル「Blood I」(油彩・キャンバス)でサイズ45.5(H)×38.0(W)cm(F8)、「Blood II」(油彩・キャンバス)で41.0×31.8×3.8(F6)、「Blood III」(油彩・キャンバス)で45.5×38.0(F8)です。
下段の7点は、タイトルはすべて「献花」(アクリルガッシュ・パネル)でサイズも29.7×21.0(A4)で同一です。



正面の壁面です。
「献花」(アクリルガッシュ・油彩・キャンバス)で162.0×97.0(M100)です。



右側の壁面です。
左から、「忘れられた海」(油彩・キャンバス)で72.7×60.6(F20)、「それから」(油彩・キャンバス)で130.3×162.0(F100)です。


入口横の壁面です。
「きこえてないふり」(油彩・キャンバス・パネル)で130.3×162.0(F100)です。

以上の14点が展示室の展示で、その他小展示室に1点、事務室壁面に2点の展示があります。



左壁面の「Blood I」です。
本展のテーマは「悼む」で、311の震災と原発事故の犠牲者、遺族、関係者に向けられています。
Bloodシリーズは薔薇の枯れ落ちた様子を描いていますが、高橋さんはそこに血液のような再生する力強さを見いだしています。



左壁面の「Blood II」です。



左壁面の「Blood III」です。



左壁面下段の「献花」シリーズ7点から3点をピックアップしてみました。
この7点と正面壁面の大作「献花」はセットになっていて、祭壇に1本ずつ花を捧げるイメージから作られています。
7点は写真からトレースされていて、ほぼ同じ形で反復されていますが、1点のみ反転されています。
上の作品の右端がそれです。


正面壁面の「献花」です。
作者の悼む気持ちが最も良く表れた作品です。



右壁面の「忘れられた海」です。
夜の街と海と一人の男。
風化する災害と原発に対する複雑な感情を表した作品です。



右壁面の「それから」です。
「それから」は、311以降という意味の「それから」と朝起きてそれからご飯を食べて、それから会社に行って・・・の「and」の意味でもあります。
日常は些細な出来事の積み重ねですが、いざそれが無くなってしまうと、呆然としてしまいます。
何から手を付けて良いのか・・・・・。
それでも希望が全くないわけではありません。
画面のほの明るさは、その漠然とした様子を表しているのでしょうか。
画面の半分以上を占める空が印象的な作品。



入口横壁面の「きこえてないふり」です。
この作品は2011年の個展時に発表したものですが、今回の悼むというテーマのスタートになった作品ということで再展示されています。


〈作家コメント〉

「生きること、生きていること」これは絶えず気になり、テーマとしていることです。
それは「食べる」あるいは「日常生活」という形で描いています。
どこにでもある、どこにもない世界を楽しんで頂けたらと思います。


311
の震災と原発問題は多くの美術家に衝撃を与えました。
そして美術家は各々の方法で311を表現しています。
高橋さんもその一人です。

悼む。
この展覧会は悼むことから始まっています。
7つの小品と1つの大作の薔薇の作品が悲しみを表しています。
インスタレーション的に展示された小品とクローズアップされた薔薇の対比、描写方法の違いが効果的です。

「忘れられた海」と「それから」は連作になっていて、悪夢の作品です。
この2点は写真的な精緻な描写が際立っています。
描かれた男は被災者であり、わたしたちでもあるように思えます。
なぜなら、311は(原発に依存していたという)わたしたちの日常をも暴いたからです。

そして最後は、Bloodシリーズの再生(光)です。
高橋さんは、花びらに明るく光り輝き、枯れ落ちてもまた再生できるような力強さを見ました。
それは体内を循環する血液をイメージするものでした。

311のような大災害を前にすると、誰しもが自身の無力を感じざるを得ません。
そんな時、希望の芽を見いだすのは美術家の仕事ではないでしょうか。
高橋さんの作品と相対して、わたしはそんな感想を持ちました。

ご高覧よろしくお願い致します。

2006年藍画廊個展
2007年藍画廊個展

2008年藍画廊個展
2011年藍画廊個展

「新世代への視点2013」公式Webサイト

会期

2013年7月22日(月)-8月3日(土)

日曜休廊

11:30am-7:00pm( 最終日-5:00pm)


会場案内