藍 画 廊



上野茂都展
ー大谷石による新作ー
UENO Shigeto


上野茂都展の展示風景です。



通常は蛍光灯によるフラットな照明が多い藍画廊の展示ですが、今回はスポット(白熱)だけの展示です。
仄暗い展示室に並べられた18体の大谷石による展示。
石像は4列に整列していて、各々の列の石像は概ねシンメトリーになっています。



展示室の展示は18体の石像と小展示室の入口に置かれた2体の石像からなります。
(その他、小展示室に4点のブロンズ作品が展示されています。)



ひっそりと隅に佇む2体の正体は、大黒様と恵比寿様です。
何とも目出度い石像で、きっと来場者の福を願っているに違いありません。
以下、展示風景のスナップをご覧下さい。


〈作家コメント〉

作者は80年代から、石・紙・土・布・石鹸など、様々な素材で群像表現を試みてきたが、今回は大谷石を使った作品となる。
会場では84のパーツを使った18体の作品で構成される。
石材としては軟質なものであるが、色彩的にも表情は豊かであたかも風化が進んだ古代遺跡のような印象を与える。
それは作り込まれた物が退化するのではなく、作り込む手前で作者が意図的に鑿を止めるという、表現上の感性を味わう事に繋がっていく。

素材を活かす。
料理などでよく使われる言葉ですが、彫刻にも当てはまります。
それは簡単なようで、存外に難しいことです。
今回の素材は大谷石。
塀などの建材でお馴染みの石です。
作品では、その親しみやすい表情と風化したような肌合いが巧く活かされて、いつもの上野さんの世界が展開されています。
さすがです。
素材が存分に活かされていますね。

林立した石像を見てみれば、その多くは上野作品のレギュラーメンバーです。
家、多重塔、犬、人物・・・等々。
石像の前に立ってみると、なぜか手を合わせたくなります。
何かが宿っているように思えるからです。
これは道祖神や路傍の石像に手を合わせたくなる気持ちと同じです。

日本には古来より森羅万象に八百万(やおよろず)の神が宿るとする信仰があります。
多様多彩を容認する大らかな信仰です。
誤解を恐れずに言えば、上野さんの作品はその信仰そのものです。
コンセプトではなく、信仰。
それが上野さんの作品を支えていて、説得力のあるものにしています。

今回の作品で特徴的なのは、像が積み重なって出来ていることです。
4〜10のパーツ(ピース)の積み重ねで一つの石像が成っています。
これは塔の原型を思わせる仕組みです。
塔は本来(日本では)仏教建築を表す言葉であり、仏教用語でした。
塔の語源はサンスクリット語でストゥーパで、「…を積み上げる、蓄積する」の意です。
大谷石を積み重ねた石像は、まさに塔の原型に他なりません。

塔は供養、祈念、祈願、慰霊、鎮魂などの目的で作られます。
ここでも信仰がその基になっています。
上野さんの作品を見ていると、日本人の信仰が持っていた世界観に行き着きます。
そして、その世界観から生まれる生活や文化に触れることができます。

ご高覧よろしくお願い致します。



2005年藍画廊個展
2006年藍画廊個展
2008年藍画廊個展
2011年藍画廊個展

上野茂都Webサイト


会期

2013年4月8日(月)ー13日(土)

11:30amー7:00pm(最終日6:00pm)


会場案内