カナイサワコ展
[漕ぎ出す時に見る景色]
KANAI Sawako
カナイサワコ展の展示風景です。
各壁面ごとの展示をご覧下さい。
画廊入口から見て、左側の壁面です。
タイトル「Scene–Snowy day–」(布・糸・角材・ワックス)で、サイズ200(H)×53(W)×8(D)cmです。
正面の壁面です。
「Scene-Waterfall–」(布・糸・ピン)で220×105×1です。
右側の壁面です。
左から「Scene-Mt.–(改題)」(布・糸・ピン)で200×100×1、「Scene–Creep–」(布・糸・角材・ワックス)で100×18×18です。
入口横の壁面です。
「The horizon changes to the mountain/地平線は山へと変わる」(布・糸・画びょう)で185×188です。
展示室の床面です。
「It is one of the ship for arriving –sprawl version–/たどり着くための舟をひとつ –スプロールバージョン–」(紙・ワックス・角材)で、舟単体 2×15×4です。
以上の6点が展示室の展示で、その他写真作品1点が小展示室に展示されています。
左壁面の「Scene–Snowy day–」です。
本展は全体としてインスタレーションの構成をとっていますが、一点一点も独立した作品になっています。
壁から角材(工作用の木)で吊るされた布(ジョゼット)には刺繍が施してありますが、刺繍は中途で終わり、糸は床に垂れ下がっています。
部分のクローズアップです。
刺繍が中途で終わっているのが分かります。
刺繍が描いているのは雪の日です。
しかも図柄の元は写真で、それをほぼ正確にトレースして刺繍されています。
正面壁面の「Scene-Waterfall–」です。
これは滝ですね。
複雑に絡み合って床に落ちていく糸がカラフルで美しい作品。
右壁面の 「Scene-Mt.–(改題)」です。
これは山ですが、空の部分に多数のピンが刺してあります。
地図の目印などで使うピンですが、ピンの頭が丸く、色が付いています。
わたしは勝手に星と見ましたが、カナイさんの素材の用い方は意表を付いていて、しかも洗練されています。
右壁面の「Scene–Creep–」です。
Creepにはいろいろな意味がありますが、蔦のような植物がはっている様子を連想させます。
赤い糸の連続性が面白い作品です。
入口横壁面の「The horizon changes to the mountain/地平線は山へと変わる」です。
これはタイトル通り、地平線を作るつもりで展示していて、途中で山に変更した作品です。
これも布と糸の使い方が独特ですね。
床面に設置された「It is one of the ship for arriving –sprawl version–/たどり着くための舟をひとつ –スプロールバージョン–」です。
本展の中心になる立体作品で、角材で制作された建造物と紙製の舟で構成されています。
桟橋や船着場のような建造物が、工作や模型などで使われる木で細かく組まれています。
床には無数の舟が漂っています。
舟です。
普通の紙、トレーシングペーパー、方眼紙で舟形を作り、ワックスに浸して成形したものです。
〈作家コメント〉
「物語は舟である。
舟は目的地がなくとも漕ぎ出す事が可能だ。
ただ漂っていることも出来る。
舟でこっちとあっちという漠然とした場所
を行ったり来たりしながら見た景色を作る。」
画廊に入ると、そこには一つの世界が広がっています。
床面にはジオラマのような海、ないしは河の船着場。
壁面には舟から見える景色。
それらが一体となって、秀逸なファンタジーを作り出しています。
水面には何艘の舟が浮かんでいるでしょう。
おそらく200を超えていると思われます。
その一つ一つの舟に物語があります。
物語とは、こちら側の世界とあちら側の世界の結び目です。
物語は、近代という時代になってから語られなくなりました。
ワンワールドというスタンダード(標準)に向かって行ったからです。
カナイさんは、舟を一艘作る度に物語を作っていきます。
その舟(物語)のエンジンは、想像力、空想力、夢を見る力です。
わたしは今、画廊の中の一艘の舟に乗っています。
これから旅に出るのです。
目的地?
目的地はありません。
漂いながら、カナイさんの物語を読んだり、脚色したり、新たな物語を作ったりするのです。
もちろん、貴方の舟も用意されています。
何処に行くのも自由です。
さぁ、漕ぎ出しましょう。
景色はすぐそこに在るのですから。
ご高覧よろしくお願い致します。
2008年藍画廊個展
2009年藍画廊個展
会期
2012年9月17日(月)ー9月22日(土)
11:30amー7:00pm(最終日6:00pm)