藍 画 廊



河田政樹展
background
KAWADA Masaki


河田政樹展の展示風景です。



画廊入口から見て、左側の壁面です。
左から作品タイトル「東京、銀座」でラジオ、「Untitled(mirage)」でType-C print、「Untitled(mask)」でType-C print、「Untitled(水の空)」でType-C print、「Untitled(Elvis)」で布にインク、「東京、銀座」でラジオです。



正面の壁面です。
左から「Untitled」でType-C print、「Untitled(peyote)」で 布にインク、「Untitled(crack)」で布にインク、アクリルです。



右側の壁面です。
左から「Untitled(帯状疱疹)」で布にインク 、「Untitled(under the skin)」で布にインク、アクリル、「Untitled(coca)」で布にインクです。
二つの木製ベンチは、鑑賞者が自由に座って作品を鑑賞することを目的に置かれています。



入口横の壁面です。
左から「Untitled(phantasm)」でType-C print、「:Untitled(white)」で布にインク、アクリル 、「東京、銀座」でラジオです。
今回は作家の希望で、画廊入口を開けた状態を通常としています。
よって掲載画像も入口を開けた状態で撮影しました。

以上の15点が展示室の展示で、その他小展示室に1点、事務室壁面に1点、芳名帳の台に1点の展示があります。



左壁面に展示された、パナソニックのポータブルラジオです。
作品名(?)は他のラジオと共通していて「東京、銀座」。
ラジオからは微かな音が流れています。
このラジオはAEN(米軍放送)にチューニングされているので、音楽がかかっているケースが多いようです。

しかしなぜ画廊の壁面にラジオ?
その謎の解明は後ほど。



3点連作で展示された写真作品の1点、「Untitled(水の空)」です。
水面に映った景色を撮影したものです。



再びラジオ。
3台のそろい踏みで、存在感有りです。
各々が別の局にチューニングされていて、微かな音が聞こえてきます。



正面壁面の「Untitled」です。
既成の印刷物を撮影して、粒子を荒くした作品です。
他の植物を撮影した作品とは趣がことなりますが、その感触は似ています。



同じく正面壁面の「Untitled(crack)」です。
この絵画シリーズは、布の上に既成の布地(すでに模様・プリントが入ったもの)を貼り、その上からペイントしたものです。



右壁面の「Untitled(under the skin)」と「Untitled(coca)」です。
右は上と同じく、既成の布地の上からペイントした作品で、左はペイントした後に既成の布地を破がした作品です。



入口横壁面の「Untitled(phantasm)」です。
左壁面の連作同様、水面に映った景色を撮影したものです。
ピントは景色に合わせていますが、水面の揺らぎで、どこにもピントが合っていません。



左は「Untitled(white)」で、右は「東京、銀座」です。
左の作品は、(想像ですが)既成の布地を使ったシリーズの絵画をホワイトで塗りつぶしたものかもしれません。
右の2台のラジオは他のラジオと同様、チューニングが変えてあります。



画廊の入口は開け放たれ、外の騒音が僅かながら進入しています。
芳名帳の台の上にもラジオが置かれ、ここからも放送が流れています。
都合7台のラジオからは微かな音で、異なる放送が常に流れています。

もしラジオがなければ、(一見)通常の美術展に見えたでしょう。
しかし画廊にラジオです。
それもどこにでもある、何の変哲もないラジオと、その、よく聴き取れない放送。
この環境は、異様で難解かもしれません。

しかし壁面の前に置かれたベンチに腰掛けて、しばらく作品の中にいると、不思議に落ち着きます。
異様や難解の持つ緊張感がここにはありません。
どうしてなんでしょうか。

一つには、音で、画廊という特殊な空間を脱臼させているからです。
画廊は、喩えてみれば教会や寺院のような雰囲気を持っています。
自ずと緊張感をたたえた空間になっています。
それは歴史的に見ても当然で、長い間美術は宗教の僕(しもべ)でした。
そこにラジオという日常を持ち込んで、微妙に音量をコントロールして、空間を変容させています。
画廊は、建物の外の日常と陸続きの構造になっているのです(構造に変えています)。

一見普通に見えるラジオ以外の作品も、よく見てみれば、同じ構造を持っています。
美術という球があるとしたら、それを内側から反転させたような作品です。
つまり美術という手法をつかって、美術の構造を明らかにしています。
(より正確にいえば、手法ではなく、反手法かもしれませんが。)
それでいて、力ずくでもないので、しばらく見ていると和むのでしょうか。

河田さんは、作品の解釈については鑑賞者の自由に任せています。
それで、わたしは安心して自分の感想を書かせていただきました。
ふと今気がついたのですが、本展のタイトルは「background」です。
backgroundとは背景のことですが、何かシックリくるタイトルです。
主人公ではなく、背景を主人公にすると、このようなヘンな空間が出現するのでしょうか。
よくわかりませんが、どうもそのような気がします。
だから、難解なのに人懐(なつ)こく、楽しい作品なのでしょうか。

ご高覧よろしくお願い致します。

2005年藍画廊個展
2007年藍画廊個展

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会期

2010年5月10日(月)-5月15日(土)


11:30am-7:00pm(最終日6:00pm)


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