藍 画 廊



有本一美展
-PLEROMA-
ARIMOTO Kazumi


有本一美展の展示風景です。



画廊入口から見て、 正面と右側の壁面です。
左(正面壁面)は、作品サイズ72.7(H)×60.6(W)cm、
右(右側壁面)は、40.9×31.8cmです。



右側と入口横右の壁面です。
左端は上でご紹介した右側壁面の作品です。
その右が、作品サイズ33.3×24.2cm、
右端は、40.9×31.8cmです。



左側の壁面です。
左から、作品サイズ40.9×31.8cm、
22.7×15.8cmです。

以上の六点が画廊内の展示で、その他道路側ウィンドウに一点の展示があります。
作品はすべてキャンバスに油彩です。



左壁面の左の作品です。
シンプルでリズミカルな線描に見えますが、構造は複雑です。
まずキャンバス全体に、下地として色の面が何層か塗られます。
その後、細かいドット(点)が描かれます。

ドットは均一ではなく、レース模様のように、画面で密度が異なります。
上の作品では、井形に密度の濃い部分があるのが分りますね。
線描の部分は下地の最後の段階に描かれ、ドットはそれを除ける形で打たれます。
つまり、画面で線描の部分は凹になっています。



左壁面の右の作品です。
白い壁面にモノクローム作品の展示の中、赤のドットが鮮烈な印象を与えています。
展示全体のアクセントになっています。



正面壁面の作品です。
わたしは、一組のダンサーの舞いを想像しました。
音楽的なリズムや動きが感じられる画面です。



この線描も面白いですね。
単純な線ですが、見ていて飽きません。



最後は入口横右壁面の作品です。
この作品には交差した線がありません。


画廊に入ると、大概は開いている道路側ウィンドウの入口が閉じています。
これは作家の選択で、開けて入口として使用する事も、閉じて壁面として使用する事も可能です。
閉じると、外界とは切り離され、幾分密室的な空間になります。
有本さんは閉じることを選んだのですが、それにも係わらず、画廊の空間は開放的です。
作品の内容と展示が、そう感じさせます。

有本さんの平面は、一見シンプルに見えますが、前述したように内容は複雑です。
面と線は、単純な地と図の構造ではありません。
描かれている思った線が、実は地かも知れないような、構造です。
ドットも複雑で、よく見れば、空間と奥行きを持っています。

有本さんの展覧会のサブタイトルは、いつもPLEROMAになっています。
PLEROMAとは、ギリシア語で「充満」ないしは「満たされた状態」を表します。
「充満」「満たされた状態」を簡単に説明すれば、「気」のような粒子で満たされた空間と言えます。
その密度や変化が、世界の空間であり時間ではないかと思います。

PLEROMAを画面で見れば、ドットの密集が「満たされた状態」に見えます。
が、それはイメージではなく、PLEROMAそのもののように見えます。
「満たされた状態」が、そこに存在しているのです。
描くのではなく、存在させることに力点が置かれた作品だと思います。

そのような構造を持つ有本さんの作品は、やはり、シンプルで複雑です。
単純とも思える線描が、決して見飽きないのは、その複雑さにあります。
線描は、世界の陰と陽を表しているのかも知れません。
又は、世界の軌跡が線描として遺されているのかも知れません。
そこに何を見るかは自由であり、シンプルで複雑な世界で遊ぶのも、自由です。

ご高覧よろしくお願い致します。

2002年藍画廊個展
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2006年藍画廊個展


会期

2008年9月15日(月)-9月20日(土)

11:30am-7:00pm(最終日6:00pm)


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