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向こう側(1)


わたしが生れ、高校卒業までの多くの時間を過ごしたのは山梨県の甲府市です。
甲府市の中心には舞鶴城公園があります。
公園は舞鶴城(甲府城)の城跡で、所謂市民の憩いの場になっています。
城の面影を留めているのは古びた石垣と堀だけだったのですが、近年石垣、櫓、門、堀の復元整備工事が行われて、既に一部は完成しているという話を聞きました。
どの程度復元整備されているのか確かめたくて、休日にデジカメ片手で出掛けてみました。

城には美しい石垣と白壁が作られていましたが、内部の工事はこれからが本番のようです。
上の小さな画像は石垣、白壁と内堀です。
城の雰囲気が出てますね。
城内で30〜40分ほど散策、撮影し、近くで知人が営む蕎麦屋に昼食を摂りに行きました。
天ぷらそばを食した後、乗ってきた自転車で城の周りの探索に。



城の東側にあった小さな商店で見つけたポスターです。
裕次郎ですね。
わたしは裕次郎のファンではありませんが、このファッションとポーズはイケてます。
白いスーツとコンビのシューズ。
赤のネクタイとポケットチーフ、極め付けは赤地に白のストライプのソックス。
ヤクザで、良いですねぇ。

ダイドーの宣伝ポスターのようですが、撮影アングルを工夫していたら後から声を掛けられました。
ガラス戸に映り込んでいる自転車の人に、何をしているのかと訝るように訊かれました。
「ポスターを撮っているんですよ」と笑顔で答えたら、すんなり納得してくれました。
(この商店のご主人だったようです。)

ここから城の南側に回り込むと、内堀を渡る橋があります。
公園の正面入口にあたるところです。
橋の上で浅い内堀をボンヤリ眺めていたら、底に何か見えます。



不法投棄されたパイプのイスのようです。
透明度の高いグリーンの浅い水の底に、静かに佇んでいるパイプだけになったイス。
水底は光の加減で白く光り、水の屈折で遠近感の狂った眼には、華奢なイスがオモチャのように見えます。
まるで、スノードームの中に作られた白砂とデッキチェアのようです。

不思議な眺めでした。
辺りの現実から、ストンと落ちこぼれたような光景です。



異る角度からの撮影です。
イスの影や樹木の影が、この光景に一層の雰囲気を与えています。

何回かシャッターを切って、帰ってからコンピュータのモニターに映し出しました。
グリーンの水の透明感、細いパイプのラインの美しさが、今一つ再現されていません。
ま、これは写真の腕の所為で、致し方ありません。
実際はもっと鮮明で、しかも微妙な光に満ちた景でしたが、上の画像でもおおよそはお分りいただけると思います。

何枚かの画像を見ているうちに、違う方向を模索してみたくなりました。
画像のレタッチです。



Photoshop Elementsのレタッチ機能(主にカラー調整)で作成した画像です。
実景の透明感は減少しましたが、色相の変化で絵画的になりました。
もう少し遊んでみましょう。



ここまで加工するとオリジナルと大きく異ってしまいますが、この辺りが限界かもしれません。
これ以上レタッチが進むと原景の良さが損なわれてしまいます。


静かな光景でした。
堀の水が偶然見せてくれた、心が静まるような光景でした。
柔らかな光が、とても美しい景色でした。
日常と背中合わせにあるかもしれない、どこか「向こう側」の景色のようでした。

向こう側(2)に続く



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