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 探偵物語(12)


梅雨の季節が始まりました。
梅雨といえば紫陽花や菖蒲で、花も季節で主役が交代します。
五月はどこに行っても花々で溢れ、民家の庭もバラやツツジが咲き誇っていました。
近年のガーデニングの流行が窺われます。



野も花がいっぱいで、色とりどりの花が美しさを競っています。
上の画像、野の花です。
場所は東京駅近く、八重洲の空地です。

実は、五月に東京出張がありました。
遺産相続をめぐる依頼で、霞が関の役所まで書類を調べに行ったのです。
例によって半日で仕事を終え、午後は東京駅方面を散策しました。
その時に撮ったものです。



花の咲いていた、空地です。
建物を壊して更地にした後、雑草が生えて花が咲いたのですね。
都心の小さな空地ですが、バブル時代を彷彿させる地上げの結果です。
しかし、こんなところに雑草だらけの空地があるとは思いませんでした。
周りは立すいの余地のないビル街で、近所には八重洲ブックセンターがあります。



空地は二つのビルを挟んで反対側にもありました。
こちらはそれほど雑草が延びておらず、花もありません。
日照の関係でしょうか。
そのかわり、棄てられた空き缶やコンビニのビニール袋が目立ちます。
と、そこに・・・・。



猫ですね。
黒白のホルスタインのような、猫です。
以前書きましたように、わたしの最近の仕事の半分くらいは猫の探索です。
つい仕事モードに入ってしまい、立ち止まって猫の観察を始めました。



風貌からして、野良ですね。
なかなか、可愛いやつです。
空地に入った猫は姿勢を正して、じっと前方を見つめています。
そのうち、腹を前後に揺すり始めました。
いや、正確にいえば、腹が勝手に痙攣を始めたのです。

あっ、あれだな。
猫の生態に詳しいわたしは、すぐに事態を理解しました。
毛玉を吐くのです。
ゲロ、です。

猫のゲロを見ても何の得もありませんが、一応確認しようと思ってその場に留まりました。
激しく腹が痙攣し、猫は一気にゲロを吐き出しました。
わたしも少し気持ち悪くなりましたが、心の中で「良かったね」と猫を労(ねぎら)いました。


ゲロを吐いた猫は、スッキリした様子でアチコチを見回していましたが、しばらくすると足早に何処へと去っていきました。
わたしも空地を背にして、散策の続きを開始しました。

この辺り、ところどころで解体や建替え工事が目に付きます。
いわゆる再開発が進んでいるようです。
あの時の土地漁りとは事情が違うかもしれませんが、土地が絡んだ金儲けには相違ありません。
世の中には懲りる奴と、懲りない奴の、二種類の人間がいるようですね。

探偵物語(13)に続く