渡辺寛展
渡辺寛展の展示風景です。
画廊入口から見て、左側の壁面です。
本展の展示は3点で、すべて写真作品(ラムダプリント)です。
サイズも共通で、125.5(H)×130(W)cmで、制作年は2005〜2007年です。
正面の壁面です。
右側の壁面です。
正面壁面の作品です。
大きな写真作品ですが、写っているのは代々木公園のホームレスのブルーテントです。
渡辺寛さんは代々木公園の近くに住まいがあって、犬の散歩でここをよく訪れます。
その時目にしたのが散在するブルーテントです。
右壁面の作品です。
これもブルーテントです。
造りは正面壁面のものとは違い、家のカタチに似ています。
しかし定住が許されたものではなく、あくまでも仮の住まいとして、ブルーテントは存在しています。
左壁面の作品です。
これはブルーテントではなく、公園の付帯設備です。
恐らく水や電気を供給する小屋のようなものだと思われます。
この小屋は公園内では黒子のような存在です。
つまり、公園の利用者にとっては目に入らない方が良いものです。
そこにブルーテントとの共通性を見いだして、撮影された作品です。
ブルーテントのある公園、これは代々木公園に限ったことではなく、全国の都市の主だった公園の風景になっています。
そのブルーテントと、それを見る自身との距離。
そのことが渡辺寛さんの作品制作の動機になっています。
ホームレスの問題は、日本の豊かさと反比例するように生まれました。
住むところを失った人々がやむなく生活する公共の公園。
そこには最低限のライフラインである水道やトイレがあるからです。渡辺寛さんの視点は、ブルーテントに接近することを避けています。
なぜなら、その近すぎる距離は、安易な社会性や問題提起に繋がってしまうからです。
逆に、ブルーテントから眼を背けることもしません。
己に正直に、ブルーテントとある距離を保ちながら眺め(対峙し)ています。渡辺寛さんは現代美術の作家で、近年は写真を素材に作品を制作しています。
本展作品では、上記の視点をカメラという道具を使い、ブルーテントと自身の距離を写し取っています。
そこには紛れもなく社会性が発生していますが、それはホームレスの存在を問うことではありません。
公園という公共の場所と、ホームレスの住むブルーテントと、自身との間の距離を写し取ることです。
そしてその距離の持つ意味を、(視覚で)思考することです。
(注:代々木公園のブルーテントは、都の撤去政策によって現在はありません。)
本展の写真作品は、一般的な写真と比べ、125.5(H)×130(W)cmと巨大です。
もちろんその大きさには意味があります。
その大きさの意味は、現実の画廊空間で確かめて下さい。
ここに掲載した画像とは異なった感想を持つはずです。
代々木公園で撮影された3点の風景写真。
それはありふれた公園の風景といえますが、美術家の眼を通すと、絵画的な色合いを帯びます。
切り取られた構図と色彩と、そして被写体との距離。
それらがすべて1点に収斂されたとき、シャッターは押されます。
これらの風景写真には、得難い美が存在します。
光が映し出すモノのカタチと色の微妙なバランス、それと撮影者と被写体との距離が持つ社会性。
その二つが分かち難く結びついて、作品(美)として存在しています。
一つ間違えば陳腐な表現に陥りがちな、危険な美です。
しかし、そうはならない。
作家として、その危険さを美に昇華する力があるからです。
その力量が十二分に出た展覧会です。
ご高覧よろしくお願い致します。
渡辺寛略歴
2002年藍画廊個展
2007年藍画廊個展(iGallery企画「世界」2007)
プライスリスト
作品の価格は2010年末まで有効です。
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iGallery DC 渡辺寛展
会期 2010年11月7日(日)〜12月19日(日) 開廊日 木・金・土・日 12:00〜19:00
会場アクセスと展覧会スケジュール