今年の藍画廊は、渡辺寛展がオープニングです。
画廊入口から見た展示風景です。
左の二点は水に映った風景を写真に撮ったものです。
風景の上下が逆に映っています。
サイズは共に891(W)×594(H)mm。
C-Type Print でアクリルマウントされています。
(本展の作品は全てC-Type Print です。)
二点のうち左側は水溜まりに映った工事中のビルです。
右側は川面に映った風景。
同じ水に映った風景ですが、作品の表情はかなり違います。
撮影方法も違いますが、水深の違い、あるいは水の種類の違いが作品に現れています。
右の黄色い作品はガラスに映った風景を撮影したものです。
映った風景が何であるかは、画廊でお確かめ下さい。
サイズは590(W)×390(H)mm。
この作品は厚手のアクリルでサンドイッチされています。
画面の大きさでアクリルもカットされていますので、立体の趣もあります。
プリントと額装が一体となった形状は、黄色の階調の美しさを際立たせています。
入口から見て左側の壁面です。
左の小品は黄色い作品と同じ額装になっています。
サイズは380(W)×248(H)mm。
ガラスに映ったビルの風景ですが、知らなければストレートな写真に見えるほどクリアに写っています。
近年、渡辺さんはリフレクション(映り込み)を写真で撮った作品をメインに制作しています。
ここまでの作品は、ガラスや水に映った風景のシリーズの新作です。
右側の二点は新展開の作品です。
この作品は二点一組になっています。
ロンドンの地下鉄構内のマジックミラーを撮影したものです。
(渡辺さんはイギリス在住です。本展の作品は全てイギリスで撮影されました。)
サイズは、一点が511(W)×647(H)mm。
アクリルマウントされています。
プラットホームの二本の柱に向かい合わせで据え付けられた、二つの(合計四つの)マジックミラーを撮影したシリーズです。
一つの柱に二つのミラーが並べてあり、それが向かい合っています。
合わせ鏡のような構造といえばお分りでしょうか。
マジックミラーは凸面鏡ですから、映り込んだ風景も歪んで見えます。
複雑な構造をもった風景です。
二点を接近させた展示と作品の位置(高さ)が実に効果的で、リフレクションの入れ子状態、とでも形容したくなります。
こちらは入口右側(事務所側)の壁面の作品です。
上の作品の反対側の柱のマジックミラーを撮影したものです。
柱の背景が違うのがお分りでしょうか。
構造の複雑さにもかかわらず、渡辺さんの作品になっているのは流石です。
マジックミラーのシリーズには、今までのリフレクションとは違った風景の捉え方があります。
渡辺さんはペインティング(絵画)から出発した作家です。
その後、インスタレーション、立体などのスタイルで制作してきました。
近年は写真を表現の手段としています。
主にリフレクションを撮影して、作品化しています。
リフレクション自体は格段珍しい手法ではありませんが、渡辺さんの視点と美意識は唯一無二のものです。
否、美意識というよりは、美しい空間を作りだす能力といったほうが正確かもしれません。
その透明感にあふれたモノクロームに近い色彩と奥行きは、彼以外には作り出せない空間です。
それは、彼のインスタレーションや立体でも表現されていた空間です。
先日渡辺さんと雑談をしていたとき、ペインティング(絵画)が話題にのぼりました。
その時、彼は自作についてこう話しました。
「ボクも写真を使ってますが、やってることはペインティング(絵画)なんですよ」。
納得したというか、合点がいきました。
わたし自身もそう思っていたからです。
考えてみれば、渡辺さんはどんなスタイルを採ろうとも、ペインティング(絵画)から離れたことのない作家でした。
そのモノの見方と空間の在り方において。
絵を描くということは、対象を一度自己の中に取り込んでそれを再構成することです。
それが写真となると、科学が介在するために少なからずの客観性を見てしまいがちです。
それが錯覚であることは、渡辺さんの作品を観ていると良く分かります。
(あるいは、写真の客観性を逆手にとっている、という言い方も出来ます。)
彼の写真は彼の絵であり、彼が再構成した対象(風景)なのです。
そこには、彼以外の誰も表現できない繊細で美しさに満ちた色彩があり、空間があるからです。
特異な色彩や空間を言葉で表現するのは難しいものです。
表現すればするほど零れ落ちるものがあるからです。
安直ですが、観ていただくしかない、とわたしは思っています。
御高覧よろしくお願いいたします。
2002年1月7日(月)-19日(土)
日祭日休廊
11:30am-7:00pm(最終日6:00pm)
会場案内
同時開催
会場 西瓜糖 (Coffe and Wine+ART) 杉並区阿佐ケ谷北1-28-8 Phone 03-3336-4389
会期 2002年1月5日(土)-28日(月) 11:00am-11:00pm 火曜定休
会場地図