iGallery DC

山内隆展
「巡礼 飛泉廻り」
YAMAUCHI Takashi




山内隆展の展示風景です。







上から、画廊中央の展示風景、画廊入口から見て左側壁面、正面壁面、右側壁面の展示です。
山内隆展は以上の12点で構成されています。
(正面壁面裏に4点のドローイング作品があります。)
モザイク作品は漂流物、大理石を使用、ドローイングは紙、インクを使用しています。
作品の詳細をご覧下さい。

 


左壁面、左と右の作品です。
左はタイトル「長春祠/花蓮(台湾)」でサイズ16.5×4.5cm、右は「大沢の滝/相模原市)」で43×9cmです。



正面壁面の作品です。
「那智瀑真景図/飛龍神社 紀伊勝浦 」で87.2×62×4cmです。

 


正面壁面エアコン下と右壁面左作品です。
左から「雲井の滝/十和田市」で29.5×9.5cm、
「塩竃瀑/相模原市」で28.2×14.7cmです。

 


右壁面右の作品です。
左から「大島古清水上組のヤツボ/相模原市」 で7.8×22cm、
「大島水場のヤツボ/かがみの滝/相模原市」 で12.5×25.5cm、
「嘉入の滝/加計呂麻島」 で40×8cmです。

 


正面壁面裏のドローイング作品です。
左から「素描 那智瀑1」で29.7×21cm、「素描 那智瀑2」で14.8×10cm、「素描 那智瀑3」で14.8×10cm、「なもなき滝/ひの坂 相模原市」で25.7×18.2cmです。


【巡礼 飛泉廻り / メモ】

 昨年の暮れ頃、あるグループ展のテーマである“ 干支の龍” にちなんだ作品制作が迷走していた私は、幾つかの偶然の出来事から制作のきっかけを見つけた。
その出来事とは、伊豆市に出かけた際にたまたま山中で黒曜石を採取したこと、また帰路に立ち寄った沼津の海岸で幾つかの漂流物を拾ったこと、そして東京都美術館開催の「永遠のローマ展」で良質なモザイク作品を鑑賞したことなどだった。
帰宅後、漂流物の上に割った黒曜石を点で置いてみた。
私は落書きするような気持ちでモザイク技法に取り組むことになった。

干支の龍作品はすぐに完成した。
しかしそのフォルムが龍ではなく滝に見えたことから、主題が一転し、作品に「瀑布図」と題付けした。
今回の「飛泉」に繋がる主題は予期せぬ方角からやってきたことになるわけだが、以降 私は瀑布の巡礼に導かれ、まずは地元の山中にある幾つかの有名無名の滝を訪れながら、その半径を広げていくことになった。

紀伊の那智滝へ進むには名古屋から3 時間半鉄道に揺られなければならない。
始発で出ても着くのは昼だ。
やっとの思いで着いた那智駅だったが、私は財布とカメラの入った鞄を電車に置き忘れてしまい、鞄が自分の元に戻った時、すでに陽が暮れかけていた。
その日は、鞄の受け取り駅である那智駅から10 駅先の串川駅周辺の海岸を歩く日になってしまった(ただしここでで採取した漂流物の幾つかが展示してある支持体に化けることになるのだが)。
那智滝は翌日の早朝に訪れ、どうには巡礼が叶った。

無意識からやってきた主題(滝)を後追いで巡礼していく。
ならばこそ漂流物という無意識の非矩形に滝のフォルムを当てはめるのも良いだろう。
漂流物上にどう対象をとらえ、モザイク技法をどのように扱えるのか。
私は試作を行い制作の姿勢を整えていった。
最終的に地と図が曖昧な構図を持った「那智瀑 真景図」の制作を行うこととなった。
いずれの作品も割り肌は出さず、全て平滑面に整えて研磨を行った。
これは今年3月に再訪したイタリアの床モザイクの平滑な表情の印象にならっている。

展示より山内 隆 2024.


山内さんの前回個展のサブタイトルは「巡礼。何処/其所」でした。
今回は「巡礼 飛泉廻り」 です。
同じ巡礼ですが、前回は長崎の隠れキリシタン、潜伏キリシタン、今回は紀伊勝浦の那智瀧を中心に据えた各所の瀧です。
そもそも巡礼は広範に分布している宗教においての重要な宗教行事です。
キリスト教は最大の世界宗教ですし、瀧をご神体と考える神道も日本国内では有力な宗教です。
それらの宗教が広まる過程は土着宗教を吸収する過程とも言えます。
そうしないと普遍的な教えを獲得できないからです。
神仏混淆(神道と仏教)はその代表ですが、日本の文化もまた外来と固有が混じり合う歴史を持っています。

山内さんの作品は古代、中世の地中海地域で発展したモザイクの技法を使っています。
カソリックのカテドラルやイスラムのモスクの装飾で有名ですね。
日本では昭和時代にビルの壁面やロビーなどで良く見かけました。
つまり工芸というジャンルで専ら使われる技法ですが、山内さんはファインアートで用いています。
しかし、引用というよりは真正面からモザイクに取り組んでいます。
その姿勢と技術的成果が瀧を表現する美しい石の集積になっています。
絵画でもない、立体でもない、これも混淆の美術です。

物事においては、ともすれば純粋の美が尊重されます。
しかし純粋には脆く、儚いところがあります。
混淆には柔軟性と歴史の変化に耐えるしぶとさがあるように思えます。
日本の文化の核には外来を取り込む柔軟さと、大きな外圧がない環境で熟成させる強みがあります。
それは極東の島国という地政学的優位が大きく作用しています。
山内さんの作品には伝統の持つ強靱さと自由な発想が混淆しています。
その混じり具合の妙が、今回もモザイクでわたしを惹き付けました。

ご高覧よろしくお願い致します。


作品リスト1
作品リスト2

2022年山内隆iGallery DC個展

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山内隆展 「巡礼 飛泉廻り」
会期:2024年6月6日(木)〜6月23日(日)
開廊日:木・金・土・日
時間:12:00〜18:00


会場アクセスと展覧会スケジュール