往復書簡 Vol.6 共生の無限性の可能性
楊力為/Turner Hershey
「往復書簡 Vol.6 共生の無限性の可能性 楊力為/Turner Hershey展」の展示風景です。
本展は造形大学近藤昌美教授の企画による往復書簡vol.6で、楊力為さんとTurner Hersheyさんの「共生の無限性の可能性」と題された二人展です。
展示室に10点(楊力為7点、Turner Hershey3点)、小展示室に5点(楊力為2点、Turner Hershey7点)の展示があります。
最初に近藤昌美教授のコメントを転載いたします。
「往復書簡展ラストに寄せて」
今回が第6回目にして最終回の往復書簡です。
往復書簡とは在校生と卒業生を結びつけるために、僕が選んだそれぞれの学生卒業生作家に作品に関しての文通をしてもらうというこの時代では実に古臭い内容の企画です。
でも私学美大の本学としては繋がりがあまり濃くないなというかねてからの印象もありこうした企画を思い付きました。
過去5回の参加者たちは今でもしっかり作家活動を続けてることは、企画者として嬉しい限りです。
この企画の大元は倉品さんからの声掛けで、若い学生展の企画依頼でした。
それは単年で終了したので2年目からは今は亡き慶應義塾大学教授の近藤幸夫先生との批評と作品の交流展企画で5年間、間に名古屋芸大との交流展を経て今回の往復書簡展まで足掛け13,4年にも渡り、藍画廊の倉品さん、福田さんには甘えっぱなしで本当にお世話になりました。
僕はこれらの展覧会以前から他学との交流展をその教育研究のひとつにして来ましたが、そのフィールドワークの現場のひとつとして藍画廊を、そしてかつては同時期に今は閉廊しているギャラリー現も使わせていただきました。
今回は藍画廊が入るビルの建替えに伴う一時的な休廊のための最終回ですが、僕自身が来年度から2年で定年を迎え大学から離れることもあり、こうした教員企画の学外での学生展も今回で終わるのは良いタイミングだと感じています。
今までご高覧くださった皆さま、また今回初めてこの企画を知る皆さまにおかれましてもこのラスト展をご高覧くださいますようよろしくお願い致します。
東京造形大学絵画専攻領域教授 近藤昌美
各壁面の展示をご覧下さい。
画廊入口から見て、左側の壁面です。
正面の壁面です。
右側の壁面です。
入口横の壁面です。
作品の詳細をご覧下さい。
左壁面の作品です。
Turner Hersheyさんの作品で、左はタイトル「パフスリーブ」(アクリル、キャンバス)でサイズは1620×1620mm、
右は「ワンピース」(アクリル、キャンバス)で1620×1620mmです。
正面壁面の作品です。
楊力為さんの作品で、左から「無題」(粉末絵具、キャンバス)で655×530mm、
「無題」(粉末絵具、キャンバス)で1620×1120mm、
「無題」(粉末絵具、キャンバス)で470×670mmです。
右壁面の作品です。
楊力為さんの作品で、左から「無題」(粉末絵具、キャンバス)で1620×1120mm、
「無題」(粉末絵具、キャンバス)で1667×910mm、
「無題」(粉末絵具、キャンバス)で535×650mm、
「無題」(粉末絵具、キャンバス)で235×580mmです。
入口横壁面の作品です。
Turner Hersheyさんの作品で、「ブラウス」(アクリル、キャンバス)で1620×1303mmです。
東京造形大学の近藤昌美教授の企画による「往復書簡」も今回が最後になりました。
近藤先生及び参加学生、作家には大変お世話になりました。
若い美術家の表現に画廊も多大な刺激を受けました。
本当に有り難うございました。最終回は楊力為さんとTurner Hersheyさんの2人展です。
楊力為さんは中国の女性で、大学院在学中の留学生です。
Turner Hersheyさんの名前は作家名で、日本人女性で卒業生です。
本展は「往復書簡」最後に相応しい力作の展示になっています。サブタイトルは「共生の無限の可能性」。
これはグローバリズムに伴って、異なる環境で育った人々の共生も含まれます。
今回の楊力為さんとTurner Hersheyさんにも当てはまりますね。
2人が描く絵画は形式としては西洋絵画のフォーマットです。
それは共通ですが、内容には異なる点があります。
それは育った環境であり、受けた教育の違いです。
そしてそのベースにあるのは地域が綿々と受け継いできた伝統文化、生活です。
楊力為さんの絵画には中国の画や書の伝統が見受けられますし、モダンなTurner Hersheyさんの絵にも日本のポートレイトや構図の伝統が窺われます。
その大胆かつ繊細な描画に感じるのは、両作家の筆触=筆の動きです。
手ではなく、身体を使った筆の軌跡が際立っています。
それと、対照的な色使い。
鮮やかな色彩の交錯と、渋い色の重なりから浮上する色香。共生とは同質と差異をボジティヴに重ね合わせて生活することです。
互いが思う普遍や当たり前を相手に押しつけることなく、想像力で融和させることです。
そして今回の展示のように、イーブンの立場でセッション(対話)し続けることです。
価値観の多様化で共生が難しい現代ですが、タイトルが示す「無限の可能性」があるはずです。
開いていながら個性を強く感じさせる2人の絵画に、そんな感想を持ちました。
ご高覧よろしくお願い致します。
2017年往復書簡
2018年往復書簡 vol.2
2020年往復書簡 vol.3
2021年往復書簡 vol.4
2022年往復書簡vol.5
会期
2023年8月21日(月)ー8月26日(土)
11:30amー7:00pm(最終日6:00pm)
会場案内