往復書簡vol.5
いろの天気雨
齋藤礼奈×中西悠月展
SAITO Rena/NAKANISIHI Yuzuki
往復書簡vol.5 ーいろの天気雨ー齋藤礼奈×中西悠月展の展示風景です。
本展は造形大学近藤昌美教授の企画による往復書簡vol.5で、齋藤礼奈さんと中西悠月さんの「いろの天気雨」と題された二人展です。
展示室に9点(齋藤4点、中西5点)、小展示室に5点(齋藤2点、中西3点)、事務室壁面に1点(齋藤)の展示があります。
最初に近藤昌美教授のコメントを転載いたします。
この在学生と卒業生による交歓展「往復書簡」は今回で第5回目になった。
この企画は学内での教育の現場を少しだけ離れてすでに社会に出ている先輩アーティストと在校生が何往復もの書簡(メール)を交わすことにより、学内の同質性の強い制作についての価値観が少しでも揺り動かされないかという試み。
今回の参加は大学院修了後2年目になる齋藤礼奈さんと学部4年の中西悠月さん。
齋藤さんは終了制作も終了後に開催した初個展もともに非常に秀逸で学外からの評価も高く、画家としての実績の第一歩を丁寧にスタートさせたところ。
一方中西さんはいまだ学外での展示を未経験でありながら大胆な作画でこれからの卒制が非常に楽しみな学生。
2人の共通点はその作品が抽象絵画であるということで、今回の2人展はその作品の「抽象」作品にまつわる概念性の違いもひとつの見どころになるのではと期待している。
2人で決めた副題は「いろの天気雨」となっており、それをキーワードに抽象作品がそれぞれの価値観の元に立ち上がって来てどのような展示構成になるのか非常に楽しみではある。
天気雨のような予報の範囲に収まらないであって欲しい。
または大洪水を起こすような荒れ方をしても良いのではないかと思っている。東京造形大学教授 近藤昌美
各壁面の展示です。
画廊入口から見て、左側の壁面です。
正面の壁面です。
右側の壁面です。
入口横の壁面です。
以下、作品の詳細をご覧下さい。
左壁面、左端の作品です。
中西悠月さんのタイトル「たまの心象風景」(キャンバス、ペンキ)でサイズは1167×1167mmです。
左壁面、中央の作品です。
齋藤礼奈さん作品で「Untitled」(キャンバス、アクリル絵具、パステル)で1620×1120mmです。
左壁面、右端の作品です。
齋藤礼奈さん作品で「Untitled」(キャンバス、アクリル絵具、パステル、色鉛筆、ダンボール )で1167×803mmです。
正面壁面、左端の作品です。
齋藤礼奈さんの作品で、「remake」(キャンバス、アクリル絵具、パステル、色鉛筆)で1455×1120mmです。
正面壁面、右端の作品です。
齋藤礼奈さんの作品で、「Untitled」(キャンバス、アクリル絵具、パステル、色鉛筆)で1620×1303mmです。
右壁面、左端の作品です。
中西悠月さんの作品で「上書きや上塗り」(キャンバス、ペンキ)で サイズは1167×1167mmです。
右壁面、中央の作品です。
中西悠月さんの作品で「つゆおわり なつ」(キャンバス、ペンキ)でサイズは1167×1167mmです。
右壁面、右端の作品です。
中西悠月さんの作品で「話の腰を折られた」(キャンバス、ペンキ)で サイズは1167×1167mmです。
入口横壁面の作品です。
中西悠月さんの作品で「空から見る山頂」(キャンバス、ペンキ)でサイズは1620×1620mmです。
往復書簡展も5回目になりますが、今回の副題は「いろの天気雨」です。
往復書簡は2人の作家がメールをやり取りしながら、展覧会に向けて作品を制作する企画です。
書簡の文面を見ると副題が決まった経緯が分かります。
二人の作家のモチーフの多くは日常であり、その日常にあって変化を与えるのは天気です。
天気の中心は何と言っても太陽であり、色は太陽の光線によって発生します。
そんな三段論法(?)で決まったようですが、わたしはグッドなタイトルだと思います。
天気雨とは晴れているの雨が降っている状態で、言わば日常の中の非日常的な天気です。
書簡では虹に触れていましたが、天気雨でよく現れる虹は非日常であり、しかも色彩(いろ)のベースです。
晴れと雨の対照も、二人の作家の画風のようでピッタリです。齋藤さんの色づかいはソフトで軽やかです。
構図も自然体で無理がなく、ノビノビとしています。
しかし既成の絵画の枠からはみ出るように、段ボールを貼ったり、画面から支持体が零れ落ちたりしています。
それが不調和になっていないのは、しっかりした概念に基づいて制作しているからです。中西さんは描画に筆を使っていません。
スクイージー(水切りワイパー)で、腕全体を使って描いています。
その力強いタッチとコントラストの高い色彩。
それは往年の具体美術の絵画(白髪一雄、田中敦子)を彷彿させますが、それは偶然ではありません。
美術の歴史を学んだ上で、独自の解釈で制作しています。
厚塗りの絵具は齋藤さんの制作技法と同じく、絵画の物質的な面が示されています。美大で学ぶ美術史はとても重要です。
作家は美術史に実作で参加することでその立場が明確になります。
二人の今日的絵画は、その美術史の流れに添っています。
先生に教えを請い、学生同士で切磋琢磨する。
そんな教育の基本が底流になっている「往復書簡シリーズ」です。ご高覧よろしくお願いします。
会期
2020年8月22日(月)ー8月27日(土)
11:30amー7:00pm(最終日6:00pm)
会場案内