加藤学展
KATO Gaku
加藤学展の展示風景です。
各壁面の展示をご覧下さい。
画廊入口から見て、左側の壁面です。
正面の壁面です。
右側の壁面です。
入口横の壁面です。
以上の13点が展示室の展示で、その他小展示室に5点、事務室壁面に1点の展示があります。
作品の詳細をご覧下さい。
左壁面、左端、中央、右端の作品です。
左から、タイトル「ドローイング 」(紙にパステル他)でサイズ562×442mm、「行々子 」(キャンバスにアクリル)で1303×1620mm、「景について 」(キャンバスにアクリル)で727×910mmです。
正面壁面、左端、右端の作品です。
左は「行々子」(キャンバスにアクリル)で1303×1620mm、右は「囀りと律動 」(キャンバスにアクリル)で450×605mmです
右壁面、左側4点の作品です。
左から、「春煙峡 」(キャンバスにアクリル)で727×333mm、「ドローイング」(紙にパステル他)で562×442mm、「ドローイング」(紙にパステル他)で562×442mm、「景層の欠片 」(キャンバスにアクリル)で605×500mmです。
右壁面、右側2点の作品です。
左は、「囀りの行方 」(キャンバスにアクリル)で416×318mm、右は「雲中の景 」(キャンバスにアクリル)で727×333mmです。
入口横壁面、左端、右端の作品です。
左は、「行々子 」(キャンバスにアクリル)で1120×1303mm、右は「ドローイング」(紙にパステル他)で562×442mmです。
〈作家コメント〉
足底譚
雨後の野辺に足を運ぶ。丘陵麓に達する頃、其処此処の斜面には水の律
動が細かく忙しない。泉の聲も昨日より賑やか。笹径を辿れば、木々の
合間の明滅はすっかり照り返り風筋も良い。嗅粘膜への直撃や時に木の
間、叢の睥睨に小走り気味にもなる。景色が展ける。畑畝がぽふぽふと
呼吸する地霧の様子が興味深い。風景は絶えず出現と消失の層の連続。
感覚拡張と共に往昔の層も重なる。収拾の付かぬ気分の良さ。知覚は膨
張した。隔てた河原でぎょうぎょうし。
画室に戻り暫しのまろ寝。北枕で仰向け。天井突き抜け天空を前に、な
んとか見える足の甲と指は奇岩の様相。先刻歩いた丘陵に連なり川浅瀬
の素足の記憶が蘇る。足底が視ていた合切を抱え絵具を捏ねる。
朧気でありながら新鮮な風景の描写です。
新年に相応しい生命の息吹を感じる絵の展示で、2023年の藍画廊は始まりました。
作家の加藤さんは八王子の在住です。
八王子は東京ですが遠からずに山々がある、自然に恵まれた地域です。
作家コメントにあるように、加藤さんは山に、野辺に親しみ、膨大なスケッチを日常としています。
それをもとに絵を描いているので、作画の基底部分に揺るぎがなく、土台がしっかりしています。
彩度の高い明るい色を使いながらも軽々に流れないのは、1点の絵の裏に数え切れないエスキース(スケッチ)が存在するからです。絵は動いています。
もちろんそれは静止画ですが、常に動いて止まぬ自然の流れと同調するように動いています。
絵からは葉を揺らす風の音、鳥の囀り、木々や草花の香り、足下の土の感触、そして陽光の移り変わりが作家の身体を通じて描写されています。
視覚に頼らない作画がここにはあって、それが見る者にとても心地良い体験(鑑賞)となっています。今わたしたちが絵画と言えば、概ね西洋絵画の流れを指します。
明治の近代化以降から現在まで、日本の風土と折り合いをつけるのが課題でした。
昨今のクールジャパン(サブカルチャーからの試み)もその一つですが、加藤さんの取り組みは真正面から、正統的に移植することを仕事としています。
山水、水墨の精神性や作画方をベースに、今生きるわたしたちと風景との係わりを表現することを目指しています。
例えば、日本には侘び寂びという感覚があります。
これは古来からの神道や道教、仏教(禅)などの思想が混在した独自のものだと思います。
それは「穏やかなニヒリズム」とも形容できる諦観です。
方丈記の「ゆく川の流れは絶えずして~」が表した、すべてのものが一時も止まらず変化していく無常です。
それはニヒリズムであっても、移りゆく自然と同調した人間の在り方を肯定した考え方です。
わたしには、加藤さんの絵に流れる思索がそれと共振しているように感じられます。中国から伝わった山水画は市井の庶民が抱いた理想を描いたものです。
山深い庵(いおり)で自然と合一する神仙の生活への憧れです。
それは言わば夢物語ですが、その理(ことわり)は不変の輝きを失っていません。
失ってしまった自然と人の関わりを古の知恵に求めるのは無駄ではありません。
そんな思いが豊かな色彩から伝わってくる加藤さんの展示です。
ご高覧よろしくお願い致します。加藤学×河田政樹2016年藍画廊
加藤学×河田政樹2018年藍画廊
加藤学2011年iGallery DC個展
加藤学2013年iGallery DC個展
加藤学2020年iGallery DC個展
会期
2023年1月10日(火)ー1月21日(土)
1/15休廊 1/14、1/21は18:00迄
11:30ー19:00
会場案内