小谷野夏木展
図と相 part 3 Icons and Aspect
KOYANO Natsuki
小谷野夏木展の展示風景です。
各壁面ごとの展示をご覧下さい。
画廊入口から見て、左側の壁面です。
左から、タイトル「どうか私達を忘れてください (たまに思い出してください) no.3」(パネル・綿布・油彩・色鉛筆)でサイズ171.5(H)×122(W)cm、「どうか私達を忘れてください (たまに思い出してください) no.2」(パネル・綿布・油彩・色鉛筆・オイルパステル)で 123.4×120.7です。
正面の壁面です。
「どうか私達を忘れてください (たまに思い出してください) no.4」(パネル・綿布・油彩・色鉛筆)で152.4×215.5です。
右側の壁面です。
左から「沈黙、蘭、耳」(パネル・綿布・油彩・色鉛筆)で70×86.3、「レンズを通して」(パネル・綿布・油彩)で74×64、「打たれる者のポーズ」(パネル・綿布・油彩・色鉛筆)で133.5×45.5です。
入口横の壁面です。
左上から時計回りに、「区分(組む手)」、「区分(口元)」、「区分(胸)」、「区分(手)」で、サイズはすべて31.5×36で、パネル・綿布・油彩です。
以上の10点が展示室の展示で、その他小展示室に1点の展示があります。
左壁面の「どうか私達を忘れてください (たまに思い出してください) no.3」です。
分割された画面に馬に乗った人物、像、魚、花、手などが描かれています。
馬に乗った人物は頭部のクローズアップがあり、その失われた右手は、何気なく下部の手を連想させます。
イメージが緩やかに連鎖したり、無関係に隣り合ったりして、一つの世界を形成しています。
同じく左壁面の「どうか私達を忘れてください (たまに思い出してください) no.2」です。
ここでは猿がイメージの重なり合いの核になっているように思えます。
関係がありそうでなさそうな図の組み合わせ。
それでいて、ある種の統一感を感じさせるのは、小谷野さんの絵画の不思議です。
正面壁面の「どうか私達を忘れてください (たまに思い出してください) no.4」です。
木に寄りかかる少女、鳥、猫、像、羊と山羊の角・・・・・。
そして、中央のタイル模様(のようなもの)。
よそよそしくも親しげな事物たち。
何かを語りかけているようで、沈黙を守っている事物たちの様相。
右壁面の「レンズを通して」です。
展示作品中唯一の変形作品です。
荒野のような風景とレトロなカメラ、塗りつぶされた平面。
組み合わせが面白い作品です。
小谷野さんの作品の多くは分割された図で構成されていますが、実際に、図は物理的に分割されています。
つまり、画面(パネルに描かれた図)一つ一つをジョイントして一つの作品にしています。
上の作品では3枚のパネルをジョイント(繋ぎ合わせて)して一点の作品になっています。
「打たれる者のポーズ」です。
疲れてコーナーの椅子に座り込んでいるボクサー。
この様子では敗色濃厚ですが、どうでしょうか。
上部には動物のスカル(頭蓋骨)。
ダークな色調で統一しながら、分割の妙が感じられる作品。
入口横壁面の区分シリーズの2点、「組む手」と「胸」です。
この区分シリーズは具象の図一枚と単色の組み合わせですが、モノクロームに近い配色が印象に残ります。
〈作家コメント〉
イメージの、「落ち窪む」という控え目な態度。
それはとても控え目で、自分自身についてほとんど明かすことがない。
ただその秘密主義の笠の下で、イメージ同士は、
かえって人目を憚ることなく、ゆるやかに隣合う。
小谷野さんの絵画は具象的な図の組み合わせ、それとアクセントのような抽象から成り立っています。
具象の図は、新聞や雑誌などのメディアからのトリミング、自身の撮影した画像が主です。
それらの図には特に意味はありません。
というより、意味を持たせない方向で収集していると想像します。
小谷野さんの絵画をじっと見ていると、背景が浮かんできます。
その背景は幾分宗教的で西欧的です。
ただしそのことは、(またしても)たいした意味はありません。
意味があるのは、それが陰画であること、絵画という手法を採っていることです。
小谷野さんの絵画は、陰の絵画です。
この現実世界が陽でありすぎる反動として、陰の絵画の存在意義はあります。
陽、つまりは明るく、眩しく、精細であること、又それへの希求が強いことです。
例えば、TVのCFを思い起こして下さい。
あの世界です。
陰の絵画は曖昧です。
そして絵画という手法は、その曖昧さを十二分に発揮することが可能です。
陽があまりにも軽すぎる現在、絵画は適度な重さを陰に与えます。
もし小谷野さんの作品が、写真や精緻な描写の連続で構成されているとしたら・・・。
その軽さと明るさは、別の意味で面白いかもしれません。
ただしそれは小谷野さんの作品でもないし、絵画でもありません。
曖昧な絵画。
幾つもの曖昧さを描き分ける技量を持った、小谷野さんの曖昧な絵画。
その曖昧さ故に、一つの世界がゆっくりと浮かび上がってくる。
素知らぬ顔をして、世界を明示するために。
ご高覧よろしくお願い致します。
2007年藍画廊個展
2010年藍画廊個展会期
2012年6月11日(月)ー6月16日(土)
11:30amー7:00pm(最終日6:00pm)