藍 画 廊



岡典明
~Happy Talk~
OKA Noriaki


2012年度最初の展覧会として、岡典明展を開催致します。
本年も藍画廊をよろしくお願いいたします。

岡典明展~Happy Talk~の展示風景です。



各壁面ごとの展示をご覧下さい。



画廊入口から見て、左側の壁面です。



正面の壁面です。



右側の壁面です。



入口横の壁面です。

本展はインスタレーション形式の展示で、51点にのぼるパーツで構成されています。
そのうち46点が展示室に展示され、残り5点が小展示室と事務室壁面に展示されています。
構成されているパーツを順にご覧下さい。



壁面に多数展示された、白色の塩化ビニールの波板を素材とするパーツです。
形と大きさは様々です。
このパーツは雲と吹き出しを表しています。
吹き出しはマンガなどで使われている、セリフが入るものです。



作家の岡さんにパーツが吹き出しに見えるよう、ポーズを取ってもらいました。
確かに吹き出しですね。



吹き出しが壁面に散らばっていると、空に浮かぶ雲に見えますね。
塩化ビニールの波板というチープな素材を巧みに使った造形です。



次は、四カ所に設置されたイスです。
これは市販のイスで、下には人工芝が敷き詰められています。
その周りを塩化ビニールの波板で半円形に囲っています。



このイス、鑑賞者が自由に腰掛けることができます。
たまたまいらしたお客様に座っていただきました。
座り心地は、とても良いです。



最後は画廊のほぼ中央に置かれた黒い台です。
園芸などで鉢を置く台ですが、上に置かれているのは、壁面に展示されている「雲/吹き出し」です。
下は玉砂利が敷き詰められ、その周りを円形に塩化ビニールの波板で囲っています。
この台は、喩えてみれば灯台のような光を発するものを表しているそうです。

岡典明さんのインスタレーション~Happy Talk~、楽しい作品です。
画廊の空気が楽しさで満ちています。
Happy Talkとは「幸せについて語りましょう」という意味ですが、このタイトルは歌から採られています。
ミュージカル、映画で有名な『南太平洋』の挿入歌で、岡さん自身はそれをカバーしたキャプテン・センシブルのバージョンを愛聴しているそうです。
タイトルのみならず、作品は歌の内容にも影響を受けています。
画廊の壁面にも歌詞が貼付されていますので、以下に転載してみましょう。

Happy Talk(歌詞)

Happy talkin', talkin Happy talk
Talk about things you like to do
You got to have a dream
If you don't have a dream
How you gonna have a dream come true

Talk about the moon floating in the sky
Looking like a lily on a lake
Talk about the bird learning how to fly
Making all the music he can make

Happy talkin' talkin Happy talk
Talk about things you like to do
You got to have a dream
If you don't have a dream
How you gonna have a dream come true

Let's talk about the star looking like a toy
Peeking through the branches of a tree
Talk about the girl talk about the boy
Counting all the ripples on the sea

Happy talkin' talkin Happy talk
Talk about things you like to do
You got to have a dream
If you don't have a dream
How you gonna make a dream come true

Talk about the boy saying to the girl
“Golly baby I'm a lucky cuss”
Talk about the girl saying to the boy
“You and me are lucky to be us”

Happy talkin' talkin Happy talk
Talk about things you like to do
You got to have a dream
If you don't have a dream
How you gonna make a dream come true
If you don't talk happy
And you never have a dream
Then you'll never have a dream come true                          

 :South Pacific(映画「南太平洋」より)


白い塩化ビニールの波板を加工した雲のような、吹き出しのようなもの。
市販されている何の変哲もない小さなイス。
同じく市販の鉢を置く台。
人工芝に玉砂利に、それを囲む塩化ビニールの波板。
どこにでもあるもの、それにちょっと手を加えたもの。

そんなもので構成されたインスタレーションが、歌の「Happy Talk」のように、飛びっきり楽しい雰囲気を画廊に作り出しています。
もちろん、念入りな作業と緻密な計算がその裏にあることは言うまでもありません。
しばらく作品の中に居れば、作家としての力量が並でないことが分かります。
すべての素材の形状や配置にはそれなりの理由(わけ)があり、収まるべきところに収まっているのです。

去年は大変な年でした。
その影響は美術家の活動にも及びました。
誰もが作品をつくることの意味を問われたのです。
岡さんも例外ではありませんでした。
岡さんは考えました。
ポジティブに、前向きに、生きることを表現できないかと。

「幸せについて語りましょう」。
幸せについて語ることは、それ自体幸せなことです。
なぜなら、それは夢について語ることでもあるからです。
イスに座って、リラックスして、夢について語る。
その言葉は、吹き出しとなって、雲となって、空に浮かんでいます。

美術とは、もともと幸せについて語ることかもしれません。
幸せは正体不明で曖昧模糊なものです。
それについて、各自が各自の方法で語る。

岡さんは岡さんなりの幸せを語っています。
それは目に見えるものを媒介として、わたしたちの感覚に訴えています。
雲や吹き出しやイスなどのパーツは巧み作られ、配置されています。
しかしそれらすべてが存在する空間の空気、それが、岡さんの語ろうとしている幸せです。
わたしは、そう思い、そう感じました。
その空気の中にいることは、とても幸せです。
多分それは、画廊空間のあちらこちらで、幸せについて語られているからでしょう。

ご高覧よろしくお願い致します。




2010年藍画廊個展

 

会期

2012年1月10日(月)ー1月21日(土)

日曜休廊

11:30amー7:00pm(最終日6:00pm)



会場案内