藍 画 廊



岡典明
ー白い象の夢を見るー
OKA Noriaki


岡典明展の展示風景です。



画廊展示室の中央に置かれた大きな作品です。
作品タイトル「白い象の沈黙」(ポリ塩化ビニール、ナイロン等)で、作品サイズ212.6(H)×φ165(W)cmです。



入口から見て左側と正面の壁面です。
左から「森ノ呼吸 A」(ポリ塩化ビニール、ナイロン等)で92×66×10.5、「森ノ呼吸 B」(ポリ塩化ビニール、ナイロン等)で92×66×10.5です。



右側の壁面です。
「象の記憶(木、スチール)」で1×φ7(蓋付き)です。



入口横の壁面です。
左から「ヤコブソン器官」(ポリ塩化ビニール、ナイロン等)で45.8×32.3×13、「焦点の停止」(銅線)で52cm の銅線です。
なお「焦点の停止」は入口のガラス窓に展示してありますので、注意しないと見逃してしまいます。

以上の6点が展示室の展示で、その他小展示室に3点、事務室壁面に1点の展示があります。



画廊中央に設置された「白い象の沈黙」です。
ポリ塩化ビニールの波板を円形に繋ぎ、その中央の少し上の部分に多くのナイロンの細い線が出ています。
その出方は何とも奇妙で、形容に困ります。
何かの髭のような感じでもあるし、植物のようでもあるし。
タイトルとも、何らかの関連がありそうだし・・・・。



近づいて横から撮影してみました。
こんな感じで、細いナイロンの線が沢山塩ビの波板から出ています。
この透明なナイロンの線は、商品と値札などのタグを結ぶのに使われている、結束帯(バンド)です。



左壁面の「森ノ呼吸 A」です。
この作品も基本構造は「白い象の沈黙」と同じで、ポリ塩化ビニールの波板にナイロンの結束帯が取り付けられて(生えて)います。
ただしこちらは波板を曲げずに、適度の大きさに切断してそのまま使用しています。
正面壁面の「森ノ呼吸 B」と対になっています。



右壁面の「象の記憶(木、スチール)」です。
何かが入れられていたスチールの缶の中に木片。
その木片は刷毛の柄の部分で、真ん中から縦に切断されています。
鏡のようにスチールの缶の底に映った半身と合わせると、元の刷毛の柄の様子が分かります。



入口横壁面の「ヤコブソン器官」です。
これも構造は「森ノ呼吸 A」シリーズと同じです。
ヤコブソン器官とは嗅覚に関する器官の一種です。



小展示室に展示されたドローイング、「1 本ノ銅線ノ表皮ヲ写シトルコト」(29×22)です。
赤いカーボン紙を利用して、銅線を指でなぞってその軌跡を紙に複写したものです


まずは、面白い作品です。
しかしその面白さを伝えるのは難しい作品です。
なぜポリ塩化ビニールの波板にナイロンの結束帯が無数に生えているのか。
その謎に答えはないのですが、とにかく魅入ってしまう。
その面白さに。

この作品には隠された絵図があります。
その絵図とは、ナイロンの結束帯の生えている部分(穴)は、実は星座の位置を表しているのです。
つまり穴を結んでいくとオリオン座だったりペガサスだったり、北斗七星だったりするのです。
穴はランダムに開けられてそこからナイロンの結束帯が出ているわけではなく、ある必然があって存在します。
しかし作品の鑑賞にはそのことは関係ありません。
あくまでも作者の都合(?)でそこからビニールの結束帯が出ているだけです。

それよりも、この作品が面白いのは、通常の論理とは異なる論理で成り立っているからです。
そしてその論理にキチンと筋が通っているからです。
だからポリ塩化ビニールの波板とビニールの結束帯の出会いに、新鮮な驚きはあっても、無理がありません。
無理というのは理屈(論理)が通っていないことです。
岡さんの作品には無理がないので、快はあっても不快はありません。

別の言い方をすれば、たとえば、大作「白い象の沈黙」にはある種の違和感を覚えます。
あのナイロンの結束帯の出方に、普通とは違う感覚を覚えます。
その反面、その意外な出会いに(これ又ある種の)感動を覚えます。
その二つが無理なく同居していて、わたしを、わたしたちを違う世界に誘(いざな)ってくれる。
少なくとも、それが面白さの秘密の一つには違いないと思います。

ご高覧よろしくお願い致します。

会期

2010年4月19日(月)-4月24日(土)


11:30am-7:00pm(最終日6:00pm)


会場案内